身近な”テクノロジー”が作られる場所へ! 「京セラ」のVR工場見学ワールドで触れる精密機器を支える技術

記事サムネイル 加工したセラミックをシアン化水素などに漬けるている

まるで本物の工場に来たみたい!

そんな体験を楽しむことができるのが、京セラ株式会社(以下、京セラ)のマニュファクチャリングワールドです。京セラは、2022年からVRChatで自社の取組みを公開する目的でワールド制作が行われており、その第5弾であるマニュファクチャリングワールドの2種が大幅アップデートされ、人工水晶やセラミックの製造工程をバーチャル空間で体験できるようになりました。

機械が動く様子を間近で見たり、工程の仕組みを学んだりといった”社会科見学のわくわく”をVRで味わうことができるようになっています。

今回、筆者は京セラのマニュファクチャリングワールドの公開ツアーに参加。その体験をレポートしていきます!

メタバースで学ぶ「京セラ」のものづくり技術

京セラの今回のテーマは「セラミック多層パッケージの製造工程」と「人口水晶・水晶ウエハの製造工程」。2つのワールドでその製造工程を手に取って体験できるようになっています。

京セラは、これまでにもVRChatを活用したコンテンツ制作を行っており、これまでに、切削工具や電子部品といった京セラの”モノづくり”にフォーカスを当てたワールドが公開されています。

本ワールドの制作は、「Sanrio Virtual Festival」でもお馴染みの株式会社Gugenkaが協力しています。

精密機器の製造過程で京セラを学ぼう!

今回追加されたエリアは、「人工水晶・水晶ウエハの製造工程」「セラミック多層パッケージの製造工程」の2つ。それぞれ別のワールドになっています。いずれも動く機械展示をさっくりと見るだけでも楽しいワールドになっていますが、解説をじっくり読むことで京セラの加工技術や精密機器についてのことも学べる場所になっています。

京セラのマスコット「えれたん」がいる基板や電子部品を元としたロボットのような形をしている
京セラのマスコットキャラクター「えれたん」がお出迎えしてくれるぞ

人工水晶・水晶ウエハの製造工程

ワールドに入るとそこは工場そのもの!

最初のコーナーには、時間をつかさどる電子部品の歴史が展示されています。歯車やひげゼンマイを使った機械式時計から始まり、水晶を使ったクォーツ時計へと進化していきます。実際に手に取ったり、分解された状態で見ることもできるため、その仕組みが分かりやすい展示です。

天窓のついた廊下にえれたんと展示が並ぶ
「人工水晶・水晶ウエハ」エリアの入口
ぜんまいや歯車が付いた時計の機工展示と説明する京セラ社員のなおちーさん
時計の機工について説明する京セラのなおちーさん
スマートウォッチに内蔵される基板中身が層になって分かれている展示になっている
スマートウォッチに内蔵される基板

ここまでは以前に公開されていた場所でした。そして、この先が今回新しく追加された人工水晶の製造現場です!閉ざされた扉が今開きます!

展示室からクリーンルームに続く大きな鉄の扉ラボのように上下に開く

ですがその前に、精密機器の工場にはバーチャルといえどそのまま入ることはできません!

工場の製造ラインは、どんなチリも持ち込むことがNGのクリーンルーム。なので、製造ラインに入る前に、エアシャワーで体に付着したゴミやホコリを吹き飛ばしましょう!これで中に入る準備はバッチリです!

クリーンルームに入るツアー参加者と案内人部屋には風が噴出される穴が並んでおりそこから粉塵を吹き飛ばす
エアシャワー室

「人工水晶・水晶ウエハの製造工程」のコーナーに入ると目に飛び込んできたのは、広い部屋の半分を占めるほどの大きなクレーン!この下に人工水晶を作る場所があります。人工水晶は、”ラスカ”と呼ばれる天然水晶を溶かし、人工の水晶として再結晶化させていきます。このクレーンは、その人工水晶の育成場所である大きなオートクレーブ(圧力容器)を運搬するために使います。

「人工水晶・水晶ウエハの製造工程」のエリア大きな鉄骨で作られた工場のクレーンが置かれている
クレーンがオートクレーブを持ち上げるgif動画

オートクレーブの中は溶液で満たされており、30〜60日かけてゆっくりと水晶を育てていきます。このワールドではその様子を見ることができます!ゆっくりとラスカが溶け出していき、じっくりと人工水晶が生成されるところを観察してみましょう。小学生の頃、理科の授業で作った塩の結晶を思い浮かべてもらうと、何が行われているか分かりやすいです。

オートクレーブの断面中でラスカが溶け出し、人工水晶になるところが見られる
オートクレーブの断面

出来上がった人工水晶は加工されていきます。カットされた水晶を大気圧プラズマで加工したり、京セラの門外不出の技術力で回路が一括形成されたりします。このワールドでは、それを3Dモデルで再現した展示を見ることが可能です!文字や図解だけではわかりにくい情報もメタバース内で間近に観察できるのはとても勉強になりますね。

こうして作られたものを”水晶ウエハ”と呼び、多くの精密電子機器の部品として組み込まれているのです。

セラミック多層パッケージの製造工程

中身の次は外の話を。今度はワールドを変えて、外装に使われるセラミック加工の工程を見ていきましょう!

このワールドでは、京セラが誇るセラミック加工の流れを見ることができます。ちなみに、京セラの”セラ”はセラミックの”セラ”なんです。

セラミック多層パッケージのコーナー対面して展示が並んでいる

最初の部屋では、セラミックがどのようなものか、どこで使われているのかを解説しています。ここでは半導体パッケージパッケージや光通信用パッケージが紹介されています。医療機器、通信機器、航空・宇宙分野などなど、京セラの技術は電子機器を取り巻く様々なところで活用されていることがわかります。

セラミックについての展示説明書きが並ぶ
セラミックについて説明するツアー案内の一翔剣さんと大きなセラミックカバー
セラミックについて説明するツアー案内の一翔剣さん

活用例の一つである光通信用のパッケージは、大容量の情報処理で必要なサーバーにも使用されています。このワールドには、そのサーバーがずらっと並んだデータセンターのような場所になっています。サーバーラックから引っこ抜いて持つこともできるのですが、実際にデータセンターで働いている方からすると肝が冷える体験ができるかもしれませんね!

暗いデータセンター内でサーバーを引き抜く画像

奥まで進むとついにセラミック加工の展示が姿を現します。

「セラミック多層パッケージ製造エリア」では、粉状のセラミックを成形し、加工し、基板にしていく6つの工程を見ることができます。

セラミック加工の展示工程ごとに機械が分かれその手順の説明が書かれている

人工水晶のコーナーと同じく、製造工程を機械が動くアニメーションで再現しており、セラミックの板がどのように基板になっていくのか、全ての工程を動きと合わせてみることができるようになっています。各工程の間には、その時点でのセラミックの状態を拡大したものが設置してあるので、それぞれ並べてみると、各機械での作業進度が分かりやすいです。

加工されたセラミック多層パッケージの画像
セラミック加工の前後比較

社内でも絶賛の京セラワールド

とても分かりやすく製造工程が見られる京セラ公式のマニュファクチャリングワールド。京セラの会社内部でも非常に分かりやすい展示だと好評になっており、その広報力の高さを絶賛されているとのこと。これからもGugenkaと協力して半年に1回のペースで拡張ができたら嬉しいと語っていました。企業のVR施策が会社内からもこれだけプラスに評価されている事例が見られるのは筆者としても非常に嬉しいところです。

そういった背景もあり、学校法人から社会科見学の教材としての相談もあるそうで、すでに京セラの会社説明会ではこのワールドを使用するといった活用例もあります。

生活に身近なスマホやPC、それこそVRヘッドセットのような精密機器に使われている電子部品。それを考えながらこのワールドを周ると親近感もまた大きく感じます。

皆様もぜひ一度、この工場見学を体験してみてはいかがでしょうか。

ワールド奥にある広場の画像白を基調とした場所で壁には京セラのロゴが書かれている

参考リンク
京セラメタバース公式サイト
京セラ株式会社公式X