【超入門】必要最小限のメタバース?主要ソーシャルVRサービス3選「VRChat」「cluster」「NeosVR」

【超入門】必要最小限のメタバース?主要ソーシャルVRサービス3選「VRChat」「cluster」「NeosVR」

前回の記事では、現在のメタバース・ブームの原点であるMeta社「Connect 2021」の基調講演を振り返りつつ、「メタバース」の定義となぜ今の時代に注目されているのかについて詳しく解説しました。

【超入門】メタバースとは?定義と今注目の理由を徹底解説

今回は、そこで「必要最小限のメタバース」として、現時点でもっともメタバースの概念を一部実現しているソーシャルVRにフォーカスをして、その特徴と主要プラットフォーム、そして実際にどうすればサービスを体験できるのかについて解説していきます。

「どれだけ離れていてもおなじ場所にいるように感じられる」「より楽しくより没入感のある新しい表現方法が可能になり、息をのむような新しい体験が実現する」。「Connect2021」でMeta社CEO マーク・ザッカーバーグ氏が語ったメタバースの概念。これは、SFの話でも未来の話でもなく、すでに実現している話。ほんの少し足を伸ばせば踏み入ることができる段階まで来ているのです。

ソーシャルVRとは?

ソーシャルVRとは、3DCGを用いた仮想空間で、アバターを介したコミュニケーションがとれるソーシャルネットワーキングサービスです。その特徴から「VRSNS」と呼称されることもあります。

ユーザーはその中で、会話や新しい出会いを楽しんだり、飲み会のようなイベントをしたり、一緒にゲームをプレイしたり、ワールドやアバターなど自身の創作物をシェアしたり、中にはそこで得たスキルや活動を仕事につなげたりと、いわば第二の人生ともいえる新たな生活を楽しめる場となっています。

コミュニケーションは基本、ボイスチャットを用いて行われます。しかし、中には空中にペンで文字を書いたり、テキストチャットを使用したり、身振り手振りで意思疎通を取ったりする「無言勢」というプレイスタイルもあり、自身の環境などに合わせたスタイルで遊ぶことができます。

「VRChat」上ではこのようにしてペンでコミュニケーションをとることもある

多くのサービスは、VRゴーグルでの利用を主眼に置いており、その他デスクトップPCやスマートフォンに対応しているものもあります。基本的に、アバターやワールドなどのコンテンツはユーザーが制作しアップロードしたものが多く、UGCを特徴にしています。

VRによる高い没入感と、UGCベースによる高い自由度。この2点がこれまでのMMORPGなどのオンラインゲームとの大きな差異となります。

ソーシャルVRの最大の魅力は、人との出会いです。そこで新たに出会った人と、一緒に時間を過ごし、友人になり、ただ雑談をする。そんな人生の放課後のような場所がソーシャルVRだと思います。

とある日の写真 ゴーグルを被るとそこにはたくさんのフレンドが待っている

想像してみてください。学校や仕事終わり、誰もいないはずの家に帰って、VRゴーグルを被るだけで、そこには何十人・何百人ものフレンドが待っている。飲み会をしてもいいし、クラブや喫茶店などのイベントに行ってもいい、創作に時間を使ってもいいし、ただ雑談をして過ごしたり、綺麗なワールドを巡るだけで良い。それだけで、日々がどれだけ豊かになるか。心がどれだけ満たされるか。そこにソーシャルVR最大の価値があると信じています。

三大主要ソーシャルVRサービス

現在、こうしたソーシャルVRサービスは大規模なものから小規模なものまでさまざまあるのですが、今回はその中でも特に主要サービスとなる3つのプラットフォームを紹介していきます。

プレイヤー人口最大級 「VRChat」

VRChatは、ソーシャルVRの代名詞ともいえる最大級のサービスです。米VRChat社が2014年にOculus DK1開発キット対応のアプリケーションとしてリリース。2017年にゲーム販売プラットフォーム「Steam」にて早期アクセス版として提供を開始しました。

ソーシャルVRプラットフォームの中でもユーザー人口は最大規模で、ワールドは国内外のユーザー制作のものが8万以上、イベントも国内だけで多い日では1日60件以上が開かれる日も珍しくないなど特に盛り上がっているプラットフォームといえるでしょう。

WindowsPC、PC接続型VRゴーグル、Meta Questシリーズ単体にそれぞれ対応しています。PCの場合は、最低要件はCPUがIntel i5-4590以上、GPUはNVIDIA GeForce GTX 970以上となっていますが、VRで利用する場合は最低でもGPUはNVIDIA GeForce RTX 1060以上は確保しておきたいところです。また、MacOSは非対応となっている点も注意が必要です。

Quest単体でも利用可能なので、十分なスペックのPCがない場合は、まずQuest単体から始めてみるのもひとつの手でしょう。その場合、処理能力の問題上、PC・PCVRに比べて表示できるワールドやアバターに制限がついてしまう点は留意してください。

筆者も最も利用時間が長いプラットフォームとなっており、平均して週100時間以上、1年間で5000時間以上をVRChat上で過ごしています。「メタバース・ソーシャルVRに”住む”ってどういうことなんだ?」と疑問に感じる方、「メタバース・ソーシャルVRが何かまず体験してみたい」という方は、ぜひ一度アカウント登録をして、実際にこの中で友人を作って、自分の「好き」を見つけて、日常を過ごしてみてほしいと思います。

運営会社:VRChat社(米国)
価格:無料
対応デバイス:Windows PC、PC VR※1、Meta Questシリーズ単体
システム要件:詳細
ダウンロード:
PC・PC VRの場合 Steamストアページ
Meta Questシリーズ単体の場合 Oculus Storeページ
※1:PC接続型VRゴーグル。SteamVRが利用可能な環境を指すことが多い。

スマホからもアクセスできる 「cluster」

clusterは、日本のクラスター社が運営するバーチャルSNS、メタバースプラットフォームです。2017年から提供を開始しました。

最大の特徴は、その対応デバイスの多さです。アプリケーションはデスクトップ版、VR版、スマートフォン版の3種類のプラットフォーム向けに提供されており、Windows、Mac OS、Android、iOSとすべてのOSに対応しています。

VRChatをはじめ、多くのSteamVR向けアプリは、Windowsのみ対応でMac OSは非対応のことが多いので、Macユーザーも利用できる点はかなり大きいでしょう。昨年12月からは、Meta Quest2単体動作版もリリースされ、現状利用を考えうるすべてのデバイスに対応したといえます。

最近では、プログラミングやゲームエンジンの操作などの専門知識がなくてもゲーム内でアイテムを組み合わせて空間を創造できる「ワールドクラフト機能」も搭載されるなど、頻繁なアップデートで日々進化しており、敷居の低さからも「まず、メタバース・ソーシャルVRを体験してみたい」という初心者に勧めやすいサービスとなっています。

運営会社:クラスター社(日本)
価格:無料
対応デバイス:PC(Mac/Windows)、PC VR、Meta Questシリーズ単体、スマートフォン(iOS/Android)
システム要件:詳細
ダウンロード:公式サイト

創作・プログラミングまでVRで完結 「NeosVR」

NeosVRは、チェコのSolirax社が2018年にリリースしたソーシャルVR・メタバースプラットフォームです。NeosVRは、リリース当初より「メタバース」をコンセプトに掲げています。同サービス公式の仮想通貨「Neosクレジット(NCR)」が標準搭載されており、個人間送金が可能だったり、将来的にはそれを発展させたNeos経済圏の創出を目指していたりと、現在アクティブなソーシャルVRサービスの中で最もメタバースの実現に意欲的なプラットフォームといえます。

サービスの特徴は、とにかく多機能ですべてがサービス内で完結している点です。多くのプラットフォームでは、UGCを基本としているもののアップロードするコンテンツ自体はサービスの外部で制作する必要があります。

NeosVRでは、もちろん外部の3Dデータなどを持ち込むことは可能にしつつ、基本的には3Dモデリングからプログラミングまですべてが仮想空間上で完結する仕様となっています。そして、そのすべての作業を他ユーザーと共同で行うことができるのです。

また、NeosVRはユーザーイベントのひとつに、毎週火曜日22時から日本人向けに「初心者案内デー」と題した合同チュートリアルがある点も注目です。

一見、難しそうに見える操作方法や用語ですが、こうした初心者を温かく迎え入れる土壌があるため、実は始めるハードルはそこまで高くありません。「近未来っぽい体験がしたい」「未来のメタバースを見せてくれ!」という方は、ぜひ一度遊びに行くといいでしょう。

運営会社:Solirax社(チェコ)
価格:無料
対応デバイス:Windows PC、PC VR、
システム要件:詳細
ダウンロード:
公式サイト(推奨)
Steamストアページ

さあ、ソーシャルVRの世界へ飛び込もう

さて、これまで紹介してきたプラットフォームを対応デバイス別に整理すると以下の通りになります。

上記で紹介した三大サービス以外にも、配信者向けに特化した「Virtual Cast」、パーティー系ゲームに特化した「Rec Room」、成年向け(NSFW)利用を条件付きで認めている「Chillout VR」、日本国内ではまだサービスインしていないもののMeta社の「Horizon Worlds」など、ソーシャルVRサービスは様々あります。

メタバースを理解する最良の方法は、自分自身で体験することです。まずは、実際にこうしたソーシャルVRの世界に訪れて、自身の目で自身の身体で、体験してみてください。現在、オールインワンの一体型VRゴーグル「Meta Quest2」は、3万7180円から販売をしています。15万円前後するゲーミングPCを最初から購入するのは難しいかもしれません。しかし、まずは自身の体験できる環境から足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

次回以降は、今回紹介した主要ソーシャルVRサービス3つの具体的な始め方・遊び方について順に解説していきます。

ABOUT US
アシュトン「メタカル最前線」初代編集長
2021年3月より「VRChat」はじめソーシャルVR/メタバースの魅力を発信するメタバースライターとして活動。週100時間以上仮想空間で生活する「メタバース住人」として、AbemaTV「ABEMA PRIME」、関西テレビ「報道ランナー」、TBS「サンデー・ジャポン」ほか多くのメディア取材を受ける。2022年4月に「メタカル最前線」を創刊。