「Voyageが成功しているのは情熱が集まっているところだから」 Spring/Summerインタビュー【後編】

5月27日、ファッションブランド「Melty Lily」オーナーのゆいぴさんは、バーチャルファッションコレクション「”Voyage” 2023 Spring/Summer」をVRChatにて開催。

音楽によるパフォーマンス、ランウェイを彩ったショップとアクター、数々の大胆な演出、とVRChatの界隈を大いに賑わせました。

メタカル最前線では、インタビューを実施。イベント終了後の興奮冷めやらぬ主催者ゆいぴさんとディレクターPONYOさんに話を聞いてきました。

後編となる本記事では、アクターチームと今後の展望について掘り下げました。前編とは独立した内容となりますが、あわせてお読みください。

情熱に溢れたアクターチーム

ーーランウェイを彩ったアクターチームについて教えてください

PONYO 今回アクターチームのリーダーをしてくれたSilviaさんが、前回のVoyageが終わった後、Voyageに触発されてアクターチーム「Silky Charm」を立ち上げてくれたんです。「Voyageのステージに見合うようなチームを作っていくんだ」って意気込みまでもらって。

ーーVoyageのステージに見合うアクターチーム

PONYO Silviaさんは僕らが本当に及ばない情熱を持っていて、技術の高さもある方です。だから今回のVoyageでは、Silviaさんにアクターチームをおまかせすることにしました。僕らが直接アクターさんを演出するよりも、技術と情熱を持っている方々にお願いする方が絶対良くなると思ったので。

その後、Silviaさんを中心としてアクターチームを作ってもらいました。だから僕らはほとんどアクターに関してはノータッチです。どのくらい練習したのか知らないぐらいでした。会場のワールドで練習したり、全然関係ないワールドで練習した様子も、動画でもらって知るくらい。

ゆいぴ 私達は無限歩行ができないので、アクターとして必要な要素がわからないんです。演出意図を伝えたぐらいで、「練習して」というお願いはしていないです。アクターチームの練習は本当にSilviaさんが引っぱってくれました。

Voyageに限らず、ランウェイでファッションモデルをするには、ただ歩ければいいわけではない。ただポーズを取ればいいわけでもない。色んな要素が必要なんです。

参加するアクターさんのスキルがバラバラな中で、チーム内でフォローしあう関係性ができていて。例えば演技が苦手な人には、演技のプロであるカソウ舞踏団さんが演技指導してくれました。持ちつ持たれつ、スキルに対するリスペクトある関係で、チーム全体が良くなっていったのだと感じています。

PONYO Silviaさんは本当に細やかな方なので、安心しておまかせできてしまったんですよね。わからないことも、わかるまで丁寧にフォローしてくれるんですよ。本当に僕らにとって、理想的な方にお願いできました。

ーー今回のVoyageを見て、アクターさんになってあの舞台に立ちたいという人がいそうですよね。

PONYO 終わった後に言われましたよ。

ゆいぴ 今まで無限歩行してこなかった人でも練習し始めたって聞きました。

PONYO アクター人数、実は今回めちゃくちゃギリギリだったんです。本番中、アクターさんたちは舞台裏をずっと走り抜けて衣装を切り替えていて、せわしなかったと思います。それに、もっと人数がいればできる演出アイデアもあるので、増やしたい気持ちがありますね。

ゆいぴ 誰でもいいわけではないですけどもね。

PONYO そうそう。特殊なスキルが求められるし、何よりも「情熱」を持っていてほしいですね。

人は想定外にしか驚かない

PONYO 開催前、正直弱気になる部分はありました。本番当日の朝にゆいぴさんに「今回配信何人集まるかな」って言われたんですよ。

ゆいぴ 本気で思っていました。

PONYO いざ本番になって、配信の視聴人数をモニタリングしながら見ていたら、僕らの想像を超える人数が見てくれていた。VRChatでの視聴インスタンスも複数立っていて、僕らが思っているよりもたくさんの人に期待されていたんだなと実感しました。

ゆいぴ 弱気になったのも理由があるんですよ。シンプルに言えば、Voyageって私の頭の中に描いているものを坪倉さんが形にするだけなんですよ。だから私から見るとすべて「想定内」なんですよ。

私は人間って「想定外」に驚くものだと考えています。だから自分の中では、人から見てすごいものができているとは思えていなくて。PONYOさんに「自信持ってもいいよ」って言われても、誰もびっくりしないんじゃないかなって。

PONYO 僕は大丈夫だと思っていたけどね。今回、本番前日に特別番組をしました。ゲストの有明ステラさんに初見の反応を見せてもらったんですよ。メインホールのランウェイを配信では見せずに、有明ステラさんの反応だけを配信するというシーンですね。一番良かった反応が、滝が出てきたシーンでした。有明さんのリアクションを見たときに明日大丈夫だなって確信しました。

ゆいぴ 一番大きな前回との違いは、私の緊張がなかったことですね。今回は、準備期間とリハーサルの時間を多く取れたので、絶対にみんなが100点以上のものを出してくれるって信頼できたんですよ。ですからトラブルがあったときも、冷静に対応できました。

PONYO 前回は僕の隣でぐちゃぐちゃになっていましたからね(笑)。
今回、yoikamiさんが途中フリーズして水着ステージの中で離脱してしまうことがありました。この後yoikamiさんは、Dimgrayさんのステージ用にスタンバイする予定でしたが、トラブルにならずにチームで連携してスムーズにリカバリーができたんです。

今回は僕インカムのやり取りに口を出さなかったんですよ。前回のゆいぴさんだったらめっちゃ口を出していたと思います。今回は信頼してまかせられましたね。

私達の熱量をリスペクトしてくれる企業にスポンサーになってもらいたい

ーー今後の展望について、今話せる限りでお願いします。

ゆいぴ 「Autumn/Winter」、やります。実はもうショップオーナーさんへの依頼やコンセプトもできています。Voyage終了後のアフターパーティが終わった翌28日の深夜2時ぐらいに、PONYOさんと坪倉さんを「Autumn/Winter」のサーバーに呼びました。

坪倉さんから「あああああああ」って返ってきて、PONYOさんから「またか……」って返ってきました(笑)。

ゆいぴ あとは、スポンサーさんが必要なことですね。今の状態はポケットマネーなので。Voyageはやりたい気持ちだけではいつまでもできない規模感だと考えています。もちろんフラワースタンドなどで支持してくださる人はいらっしゃるのですけども、足りない状態です。

今は、やりたい気持ちとお金なんていいからやろうって人が居るからできているだけで、ずっとこのままではダメ。関わってくれる皆さんに還元したいです。

1回目から話していますが、Voyageはリアルとバーチャル世界の架け橋になりたいんです。自分の中にある使命感として、バーチャルの中で頑張っている人がいるんだよってどうしても伝えたい。そのためにもスポンサーさんが必要です。

どこでもいいかって言われると違います。お金を出せばいいでしょという企業のスポンサーを受ける気はありません。私達の熱量をリスペクトしてくれて、同じ思いで盛りあげてくれる企業さんが良いです。

PONYO Voyageが成功している要因は情熱が集まっているからだ、と理解してくれる企業が嬉しいですね。そうでなければベクトルが違うため、関係構築できないと思います。僕らにみんなが期待してくれているのは、お金を掛けているからとか、いい人材が集まっているからではないんですよね。

Voyageって奇跡的なバランスで成り立っていると思うので。技術や資金力だけではない、関わる全員が同じ方向を向いているからできるんです。ここに資金をもっているけど向いている方向が違う企業が入ってきたら、僕らも瓦解してしまうかもしれません。

僕らが一番大事にしないといけないのは、Voyageが成功している要因を忘れず大切にすることだと考えています。目先の利益で、新たな物を取り入れたらもうおしまいだと思っています。

僕も経験上、企業が最初から理解してくれるとは思っていません。僕らの情熱を伝えて、ちゃんと情熱をもって答えてくれる方々と色々話しあって、今のVoyageを貫き通したいと思います。

ゆいぴ 私達の目標や最終的になりたいビジョンも色々あるんですけど、それよりも守りたいものが多いです。

実は今回、企業協賛を集めなかったんです。理由として、視聴者から見て「企業が関わっているんだ」「お金があるからできるもの」と思われたくなかったからなんです。往来さんだけは、代表のVRChatへの理解が深い事と、Voyageのプロジェクトを始める前から個人的に応援してくれたのでお願いしています。

今回は「個人だってここまでできる」を見せたかったんです。個人で開催することで守りたいものがあったから。協賛がある場合、責任がありますから「会場に80人呼びます」なんて言えません。

PONYO 僕らができることを全部伝えた上で、失敗も受けとめてチャレンジしてくれるようなスピリッツを持っている企業と一緒にできたら、Voyageにとっての理想のスポンサーとの関係性だと思っています。

現状のVoyageはモチベーションが消えたら終わり

PONYO 本当に形になってよかったね。トラブルも少なかった。

ゆいぴ 皆さんからの反響もよかったところか、良すぎてどうしようって感じですけど(笑)。
反響を貰えると、出てくれた人や協力してくれた方にもよかったって思ってもらえるから、嬉しいです。皆さんの声に支えられています。実際、Voyageって私達のモチベーションが消えたら終わりですからね。

PONYO 幸いなことに、僕らは夢を叶えているようで、めちゃくちゃ自分たちが楽しいと思ってVoyageをやっています。お客さんのために自己犠牲を払うという状態になってしまったら、思ったような反応が得られない時、すごくダメージを食らうと思うんですよね。

今は、僕らも楽しくて、見てくれている人も楽しい、で成り立っています。運営側と受けとる側が同じ方向を見て、Voyageのコンテンツを楽しめているという現状を、これからも本当に大切にしていきたいと思っています。

ファッションのパワーを多くの人に届けたVoyage。次なる舞台は「Autumn/Winter」になります。ゆいぴさんやPONYOさんらが届ける旅路は次はどこに向かうのでしょうか。今後も目が離せません。

インタビュアー:柘榴石まおりん(Twitter)