企業・自治体のVRChat参入の立役者株式会社往来とは?ぴちきょさんに聞いてみた

ここ数年で、VRChatへの企業参入の動きが活発になっています。
VRChat社とパートナーシップ契約を結んだ各企業が、自社のコンテンツを活かしたイベントを開催するなど、とても盛り上がりを見せています。

さまざまな企業の中で、特に目を見張る活躍をされている「株式会社往来」を皆さんはご存知でしょうか。

何だか聞いたことはあるんだけど、どんな会社なのかわからない、何をやっている会社さんなの?と思われている方も多いことでしょう。

株式会社往来は、主にまだVR業界に未参入の企業のバックアップやサポートを行うことで新しいワールドをやコンテンツを発表し、VRChatに新しい風を吹き込み続けています。

VRChat内の月面にできたモスバーガーの店舗や、VR上につくられたNISSAN CROSSINGのバーチャルギャラリーなどの制作に関わられており、最近ではメタバースヨコスカのワールドと聞けば、わかる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はいろんな企業や自治体の縁の下の力持ち的なお仕事を通じて、メタバースの発展を目指されている株式会社往来さんにスポットを当ててみたいと思い、株式会社往来 代表取締役社長ぴちきょ(東 智美)さんにお話を伺うことができました!

往来って何をやってる会社なの?

ーーまずは株式会社往来とはどのような会社なのか概要からお聞きしたいです。

ぴちきょ 往来はVR・メタバースコンテンツの制作プロダクションです。

公式サイトにもありますが、メタバース総合プロデュース、メタバースコンサルティング、メタバース戦略PR、アバターワーク派遣・教育翻訳・国際渉外、執筆、登壇やセミナーなどをまるっとやっています。

その中で表に出てくるお仕事は、メタバースコンテンツ制作やメタバース戦略PRの部分だと思います。最初に皆さんが目にすることが多かったコンテンツは、日産自動車の、銀座「NISSAN CROSSING」あたりかなと思っています。

企業さんからは「このくらいのご予算があるんですけど、どのような感じで、VR・メタバース上で広報活動ができますか?」というご相談を受けます。その後、ご相談の方針にあわせて、往来で企画を立ててワールドの製作を行い、PR、プロモーション活動までの一式をやっています。

企業からの広報活動が一番柱となるお仕事ですが、登壇とか執筆活動で本も出しています。

2021年の3月に「仮想空間とVR」、2022年の12月に「アバターワーク」を出版しました。

ーーアバターワークの本については、執筆のお手伝いをさせていただきました。

ぴちきょ はい、ありがとうございます!(笑)私が1人で書いているのではなくて、武者さんや堀さんなどの強い書き手の方を中心に書いています。私は全体のとりまとめ、窓口をしているようなものですね。株式会社往来としてお受けしているという形なんですけど、実質メインの書き手さんが中心に、制作が進められた本です。

あとは登壇依頼も多いんですけどXR関係のイベントとか、それ以外でもメタバースの話をしてほしいといったような、いろんな催し物への登壇依頼とかセミナー依頼とか、大学の授業とかなどを受けて、講演にいったり、授業を行ったりしています。

ーー大学にもお仕事で行ってるんですね!びっくりしました。

ぴちきょ そうなんですよ〜!新しいテクノロジーなどの流行とかも教えるようなiU大学があるのですが、生徒さんに教えてくださいと言われて授業を行いました。知り合いが何人か先生をしているので、その縁で声をかけてもらいました。以上が往来の大まかな事業内容です。

ーーVRChat以前に、Ingressとも深いつながりがあるとお聞きしましたが、お聞きしてもよろしいでしょうか?

ぴちきょ IngressはVRChatの仕事とは直接は関係ありません。以前モバイルバッテリーの「Cheero」でお仕事をしてるときに、Ingress専用モバイルバッテリーというのを作ったことがあるんですよ。まだIngressがGoogle社にあった頃に、Google社と打ち合わせして作ったバッテリーですね。

そしてよくIngressのことが話にでてくるのは、Cheeroの人間として、いろんなアノマリー(*)に参加して登壇をしたり、ブースを出したりといった活動をしていました。

(*:アノマリーとは、Ingressで、ファクション (陣営) ごとに、現地または訪問しているプレーヤーがレベルに関係なく一緒に参加できる無料のイベントのこと)

Ingressのときにできた縁でVRChatの仕事に繋がったケースもあります。モスバーガーや横須賀市が該当しますね。

モスバーガーの担当は、以前伊藤園でIngressの担当をしていた方なんですよ。

横須賀市がIngressのイベントを運営するにあたって、堀さん(堀 正岳氏)とおおつね(おおつねまさふみ氏)がアドバイザーに入ったりしました。他にも、私と堀さんで横須賀市さんの全然別のセミナー講義とかワークショップとか担当させていただいて、「メタバース面白いですよ〜」「VRChat熱いですよ〜」っていう話をずっとしてきたっていう前提があります。

ーーそれではこれまでに制作したワールドや取り組みについてお聞きしてもいいでしょうか。

ぴちきょ 制作に関して、日産自動車さんは、4つのワールドを作って発表しました。NISSAN CROSSING、日産サクラの発表会SAKURAドライビングワールドがあります。温暖化とかに対して学べるツアーと、電気を蓄電、消費をして電気について学べるEVワールドですね。

それ以外にも、日産自動車のデザイナーの方を呼んで、車のデザインの話をしてもらうイベントや、銀座にあるリアルの「NISSAN CROSSING」とVRChatの「NISSAN CROSSING」を動画で繋いで、ハンドルぐるぐる体操を一緒に踊るイベントなど開催しています。

次はモスバーガーさんですね。いくつかマイナーチェンジを行っていますが、1番最初は2022年9月の月見フォカッチャです。
モスバーガーさんが初めて月見商戦に参加される際に、メタバースでもプロモーションを行いたいというご要望があって、月に作られた店舗のワールドを作りました。

その後は春の季節に桜の木を生やしてお月見春バージョンを作ったり、新日のプロレスラーオカダ・カズチカ選手がモスバーガーさんとコラボしたりしまして、毎月29日はオカダ・カズチカ選手バージョンにワールドが変化するなどのようなことをしています。

それから京セラさんもありますね。基本的にはBtoB向けのショールームがメインですがワールドを作って広報活動をしています。1つは工具のワールドで、もう1つはレーザー製品を伝えるための京セラのレーザーコンセプト製品展示ワールドを作っています。

直近としては、メタバースヨコスカのドブ板商店街ワールドと11月10日にリリースされた株式会社フューチャーショップさんの「FUTURE 20th SQUARE」ワールドをリリースしました。

人との繋がりを大切に、そして往来のこれから

ーーいろんな方が関わって、一つのものを作り上げることに本当に感銘をうけます。

ぴちきょ ありがとうございます。どうやってスタッフさんを呼んでるんですかって聞かれるんですが、クリエイターの方も色々スキル強い方とか色々いらっしゃる中で、足で探してますね(笑)

VRChatのワールドクリエイターさんとかはもう全部足で探してます。いろんな会話コミュニティとかに顔を出したり、スタッフをやったりして、横の繋がりの中からお話してるうちにその人となりを知ったり、何ができるかっていうのを聞いたりしています。

でもやっぱりお付き合いの中で人となりを知って、この人と一緒に仕事したいなと思った方に正面から声をかけたりしています。

横須賀市さんにしてもそうですし、モスバーガーさんにしてもそうなんですけど、担当者がもう一生懸命活動されるぐらいの方なんで、コミュニティを大切にしたプロモーションっていうことに対してすごい感度が高いんですよね。

日産自動車の担当の方も、コミュニティに対してすっと理解をしてくださったし、ここのコミュニティと一緒に何かをやりたいと言ってもらえました。

ーーいろんなコミュニティや企業さんの縦や横の繋がりから、みたいな感じなんですね。

ぴちきょ 「人脈」っていうワードを使わないようにしています。本当に色んな人から「人脈すごいありますね」と言われるんですけど、人を鉱脈の鉱山みたいに扱うのが嫌なんですよ。金脈とかそういう言葉に使うじゃないですか。

人脈っていう言葉からは、まさに何か自分にとって利益のあるものを掘っていくみたいなイメージを持つので、私はあくまでもその1対1のその人が好きから始まり、お付き合い先に信頼関係が生まれて、それがお仕事になることもあるといった考え方をしています。

ーー言われてみれば「人脈」はあまりいいイメージではないですね。

ぴちきょ 一般的に使われていて、便利な言葉ではあるんですけどね。「その人脈すごい持ってらっしゃいますね」みたいなことを言われたときには、わざわざ大きく否定することはないです。インタビューなどで自分の思いを言うのであれば、人脈っていう言葉は一切使わないようにしていて「ご縁があったり繋がりの中で、思いが一致して形になりました」みたいな表現をすることが多いですね。

ーーお話を聞いていると、今後のVR業界が楽しみになってきますね。

ぴちきょ お仕事を一緒にお願いしてやっていただくにあたってわりと意識してる点がありまして、スタークリエイターさんだけを集めて物を作るっていうのは、すごい強いと思うんですよ。

でもスターばかりだと、新しく人を育てるという意味においては、ちょっとチャンスが広がらないと思っています。

なので強いクリエイターさんを中心に置きつつも、実はそんなにクライアント筋にはその候補が挙がってきていない人たち、お付き合いがあって「この人いいものづくりするけど外には届いてないな」と思う方をやっぱり引き上げたいと思っています。

一般的にはそんなに名前が通ってないっていう方は積極的に入っていただくようにはまず、意識してます。それとともに、横須賀で特に意識したのはVRChatにいない人ですね。

今回特に、SUTOさんっていうプロのCGクリエイターの方に入っていただいたんですけどその方が、X(旧Twitter)で「独立しました、仕事募集してます!」といったポストをたまたま拾って、ポートフォリオを拝見したらすごい実力のある方だったんですよ。

VRChatにはいないゲーム業界のCGクリエイターさんといったガチプロの方を積極的に呼んで、他の界隈からVRメタバースの世界に来てもらいたいと思い、チームビルディングをするようにしています。

ーー後進の育成もしつつ、新しい人を発掘していく、というような感じでしょうか。

ぴちきょ そうなんです。自分はやはり仕事を作る側にいて、企業さんとそのクリエイターさんを繋いで仕事を作るという立ち位置にいる人間なので、どうやったら後進が育つかみたいなのはちゃんと考えながらやらないと駄目だって思っています。この世界で仕事をやる以上の義務として、後進が育つ土壌作りを必ずすると決めて仕事をしていますよ。

ーー本当にどうもありがとうございました!

●参考リンク
株式会社往来公式サイト
ぴちきょ(東 智美) X(旧Twitter)