メタバース事業参入から3ヶ月。大丸松坂屋百貨店の現在地は?【#tokyoxrmeta】

1月26日から1月28日にかけて、東京ビッグサイトにて大規模商談・展示会「TOKYO XR・メタバース&コンテンツビジネスワールド」が開催されました。XRやメタバースに関連する企業、団体、個人が参加し、特に個人参加は破格の出展費用のおかげか、VRChatで活躍する団体やクリエイターの出展も見られました。

このイベントの出展企業のひとつが、昨年10月からオリジナル3Dアバターを展開している大丸松坂屋百貨店です。株式会社Vとの合同出展となったブースでは、一日で最大5回ものトークセッションが開催。28日にはステージイベントへの登壇もあり、最前線でメタバース事業を展開する同社の知見が発信されました。

合同ブースの目印は、昨年10月発売のオリジナルアバターと、「VRC合法チート研究会」の「チセ」ちゃんの全身パネル。アバターの全身を映しているため、記念撮影にもってこいです。ちなみにチセちゃんのパネルは、「VRC合法チート研究会」の代表・SOUさんが株式会社Vさんの案件に関わっている縁で置かれたとのことです。

来場者向けの寄せ書きコーナーも。ビジネス系イベントでこれはけっこうめずらしいですね。筆者が訪問した時点で、すでにVRChat方面で見慣れたお名前がチラホラ見られました。

(写真左:大丸松坂屋百貨店 岡崎路易さん 写真右:株式会社V 藤原光汰(Alice)さん)

全5回のトークセッションのうち、1月26日に訪問した筆者は5回目の「大丸松坂屋百貨店のメタバース戦略とは」に参加。大丸松坂屋百貨店からはDX推進部 部長の岡崎路易さん、株式会社Vからは代表の藤原光汰(Alice)さんが出席し、これまでのメタバース事業について包括的に振り返る内容となりました。

「百貨店という”空間”を扱い、出店地域ごとの言葉の選び方も重視される業界だからこそ、当社とメタバース事業との親和性は高かった」と語る岡崎さんは、自身もVRChatにドハマりした現役プレイヤーの一人。そのため仕事としてではなく、生活の軸として取り組んでいる姿勢がユーザーにも伝わっているのではと、Aliceさんはコメントしました。

オリジナルアバターの話題では、「男性アバターがクリエイターから高評価をいただいている」という反響を紹介。そして「正装」というコンセプトが「対外的に見せやすい」ことにも触れられました。また、参入後の課題として、「企業の公式X」を引き合いに出しつつ、「黎明期ゆえに正解がない。企業、個人ともに、大丈夫なラインを図るのが難しい」という点を挙げました。

今後の展開としては、企業・行政とのコラボを推進していく一方、オリジナルアバターの第2弾も発売することを予告。実際に、イベント後の1月30日に新作アバター5体が発表されました。

なお、第1弾・第2弾ともにVRChat外のクリエイターをデザインに迎えた理由として、「自分のイラストが動き出す体験をしてもらい、その感動を外に発信してほしい」というビジョンがあるとのことです。実際、第1弾参加のイラストレーターさんの反応は上々だったそう。

質疑応答にて「当イベントでの反響はどうか」と質問したところ、岡崎さんは「VRChatに関心がある企業が多い」とコメント。別のトークセッションでは、企業担当者から「Webメタバースではなく、VRChatなどのプラットフォームをなぜ利用するのか?」や「VRChatのユーザーにリーチするためにどのようなSNS戦略を練るべきか」といった質問が寄せられたらしく、”人の多いメタバース”としてVRChatに注目している人が多そう、という感触を伝えてくれました。

岡崎さんも、ゼロから企画を立てるのはハードな上、そもそも人が来てくれるかどうかわからないことから、こうした企業とのコラボを模索しているとのこと。岡崎さん自身も、アバター試着会にご自身のフレンドが多く来てくれたエピソードを挙げ、VRChatコミュニティに根を下ろしつつある大丸松坂屋百貨店が、水先案内人となっていろんな企業をサポートしたいという想いが感じ取れました。

余談ですが、この5回目のトークセッションは満員御礼。その参加者の多くは一般ユーザーで、岡崎さんのフレンドも多くいらっしゃったそうです。「やや内輪ノリが強くなってしまった」と後に反省していらっしゃいましたが、この「エンドユーザーとの濃いつながり」こそ、ソーシャルVRにおける事業展開のカギではないでしょうか。

老舗百貨店によるメタバースでの大きな挑戦は、VRChatという”現地”で培われたつながりとともに、まだまだ続いていきそうです。