【PR】大丸・松坂屋アバターはどのようにしてデザインされたのか。SWAVさんに聞く『湊渚』のデザイン秘話

今を活躍するイラストレーターやモデラーと大丸松坂屋百貨店がタッグを組んでアバターを販売している大丸・松坂屋アバター販売公式。

アバターファッション領域に参入してからこれまでに12体ものアバターを世に送り出してきました。

このたびメタカル最前線は、キャラクターデザイン、プロデュース、制作を担当した大丸・松坂屋とV社にインタビューを実施。

インタビュー企画の第2弾となる今回は、アバター『湊渚』(みお)のキャラクターデザインを担当したイラストレーターのSWAVさんに『湊渚』のキャラクターデザインについてお話を伺っていきます。

SWAV / イラストレーター

1997年生まれ。フリーランスイラストレーター、キャラクターデザイナー、コンセプトアーティスト。FLAT STUDIO所属。特徴的なカラーデザインとシネマティックな世界観を軸とし「ノスタルジックな未来」をコンセプトに作品制作をおこなう。キャラクター、モービル、ファッションまで、国内外のトレンドを意識し独自のデザインに落とし込む。

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「VRChat」を外野から見かけることはあった

――本日はよろしくお願いいたします。まず、大丸・松坂屋からのオファーの経緯について伺っていければなと思います。VRChat向けアバターのキャラクターデザインは今回が初めてということでよろしいでしょうか?

SWAV:そうなりますね。今回のお仕事は、まず大丸・松坂屋さんの方から企画コンセプトについてご連絡いただいたところから始まりました。「正装」というコンセプトですね。それをベースに、『SWAVさんの解釈と合わせてデザインしていただきたい』といったご依頼でした。

――そもそも、「VRChat」の存在やそこに向けたアバターの販売が行われているというようなことは、事前にどの程度知っていたのでしょうか?

SWAV:実は、「VRChat」自体はなんとなく知っていたんです。どの動画かは忘れてしまったんですが、最初にホラーゲームの実況みたいなものを見かけて、「VRChat」のホラーワールドというものを知りました。また、VRChatのスナップ写真をSNSで見かけたこともあり、個人のクリエイターがアバターを販売したり、ユーザーがそれをオリジナリティある感じで組み合わせたりするアバターファッションという領域があることも知っていました。

――なるほど! 実際にプレイしてみたりということはあったのでしょうか?

SWAV:いえ、あくまで見るだけといった感じで。外野から見るのは好きでしたね。なので、大丸・松坂屋さんからお話を伺ったときは驚きましたね。

もともと、僕は百貨店も好きなんですよ。大丸・松坂屋さんにも何度も足を運んだことがあって。百貨店が「VRChat」のアバターファッションの領域に参入するんだという新鮮味がありました。

「海」をモチーフにイメージを膨らませていった『湊渚』のデザイン

――さっそく、SWAVさんが手がけられた『湊渚』のデザインのお話に移っていきましょうか。「正装」というコンセプトからイメージを膨らませたということでしたが、そのコンセプトをどのように解釈していったのでしょうか

SWAV:まず、「正装」というコンセプトは第1弾から引き続きですよね。僕の場合は、もう少し具体的に、「リアルクローズ寄りというよりは、キャッチーなデザインにしてほしい」というようなコメントもいただいていたんです。

「VRChat」の人たちが普段どんなアバターを着ているんだろうということもリサーチしていきました。コンセプトを考えていく中で、やっぱり「VRChatならでは」みたいな可能性を引き出せたらなと思いました。

ただ、デザイン段階であまりに凝りすぎてしまうと、デザインを3Dモデルに起こす際に、干渉の問題が発生したり、シルエットを再現するのが難しくなったりするため、制約もありました。そうした中で、上手く着地させるにはどうすればよいのかということを意識しましたね。

――今回、付属アイテムとして大きなクラゲが付いてきたりするので、「海」をモチーフにしているのかなと思っていました。

少し離れて追従して来るクラゲ(ON/OFF可能)
巨大なクラゲの上に座るアニメーションも付属

SWAV:実は、あの「くらげ」は3Dモデリングチームのアイディアで、僕のデザイン段階にはなかったんですよ(笑) 

でも、おっしゃるとおりモチーフとして「海」だったり「深海」だったりを散りばめています。3Dモデリングチームの皆さんは、それを上手く汲み取ってくださって、「くらげ」のアイディアを膨らませてくれたのかなと。僕も後で確認して「確かに、湊渚らしいな」と思いました。

――「海」というモチーフを思いついたきっかけは何ですか?

SWAV:自分がもともと海が好きというのはあります。ただ、先ほども申し上げたとおり「VRChatならでは」の魅力や可能性というのはなんだろうと考えていく中で、「海」に落ち着いた感じですね。

海の生き物とかって、現実でも、大気のある陸上の生き物とはまた違った水中ならではのフォルムをしていますよね。例えば、ヒレとかは、水中だからこそのデザインで、環境が違えば求められるデザインも変わってくる。水中ならではの質感みたいなものは、リアルで再現しようとすると難しいですが、バーチャルなら再現できる。3Dならではの面白さが引き出せるモチーフかなと思いました。

でも、既に「VRChat」向けのアバターとか衣装アイテムとかってたくさんあるじゃないですか。せっかくデザインするなら重複は避けたいと思いました。だから、「海」といっても安易に水着とかをモチーフにするのではなく、見た目の綺麗さや可愛さから垣間見える裏腹なダークさみたいなものも出そうとしたんです。海の持つ綺麗さと怖さの二面性を落とし込むみたいな。

――アームカバーですが、指先まで覆われているのにネイルが付いていますよね。試着した際に、手元を見てそれに気が付いて、ちょっと怖さもあるのかなと思いましたが、そういうことだったのですね。

SWAV:そうですね。あれは僕のデザインで、ちょっと非人間っぽさを出すみたいな意図がありました。他にもモチーフとしては、分かりやすい部分だと手首の部分と足の部分に「真珠」の飾りを付けています。真珠をあしらった脚のリボンも「開ききった貝」をモチーフにしています。「魚の骨」を意識したデザインもドレスのところどころに入れていまして、アイドル衣装っぽい可愛さもあるんだけど、その中にどこか物悲しい雰囲気があるというアンビバレントな印象を目指しました。

ほかに、具体的なモチーフでいえば、「リーフィーシードラゴン」と「カブトクラゲ」をイメージしましたね。「リーフィーシードラゴン」はタツノオトシゴの仲間で、最大40cmある生き物なんですが、水中を漂っている姿がすごく綺麗なこともあり、シルエットを少し参考にしました。

「カブトクラゲ」は、水族館でも見かけることがある光るクラゲです。プリズムみたいな構造色が特徴的で、髪色とか衣装の透け感とかを考える際に参考にしました。あと、メダカの品種に「ブラックダイヤ」というのがいて。これもまた、光を受けるとさまざまな色に見える綺麗なメダカです。インナーの部分や黒のデザインの参考イメージとして用いました。

――すごい! 細かい部分にまで具体的なモチーフがあるのですね。

SWAV:よく水族館に行くんですよ。ただ、インナーの発光部分とかには、僕がデザインした部分もあれば、3Dモデリングチームが僕のデザインを解釈した上で追加してくださった部分もあります。きちんと汲み取っていただけて嬉しい限りです。

あと、テクスチャーもすごくよくできています。僕の筆跡というか、イラストらしいタッチも尊重してくださって、手描き感のある綺麗なテクスチャーになっています。三面図をそのまま3Dに落とし込むのではなく、VRChatアバターとして活きるように解釈して、デザインの細かい部分まで3Dモデルに反映してくださったり、追加のアイディアも盛り込んでくださったりしていたので、完成品を見て驚きました。

――今回3Dモデリングを担当された戸森美影さんと(仮)さん、3Dモデルビジュアル調整及びテクスチャーを担当されただるだなさん、アイテムギミック制作を担当されたまきさんなどは、いずれもVRChatのクリエイティブシーンで活躍されている方で、人気アバターも手がけられているのですよね。

SWAV:そういった方々とご一緒できたのは、すごくよかったですね。やはり、可愛いモデルに落とし込んでいただけるとキャラクターとしての解像度も上がるので、それによって『湊渚』に対する僕自身の世界観も広がりましたし、愛着も増しました。

――「水中」や「海」というのは、VRChatのワールドでも多く見られるモチーフですね。そういったワールドで『湊渚』の写真を撮ったりするのも楽しそうですね。

SWAV:ぜひ楽しんでいただきたいなと思います。発光部分のエミッションとかは、ワールドのライティングにも依存するので、「深海」のワールドなど暗めのところに行くと、普段とは違った魅力を引き出せると思います。

photo by 立花スイ

ユーザーには色んな楽しみ方で思いも寄らない側面を見つけてほしい

――ユーザーの好みによっていろいろな楽しみ方ができるというのも、VRChatアバターならではだと思います。自身のデザインしたキャラクターが「アバター」としてユーザーの手に渡るということについてはどのような印象をお持ちでしょうか?

SWAV:そこは、リアルのアパレルとの共通項がたくさんあるなと思います。僕は以前、リアルのアパレルのデザインも手がけさせていただいたことがあって。その際は、デザインでの主張というのはもちろんしたんですが、着こなせる余地みたいなものを残したいなと意識して作業しました。今回、そのことを思い出しながらデザインしました。

また、シルエットを大事にすることも、リアルのアパレルをデザインしたときと同じように意識しました。バーチャルファッションの場合、素材の制約などがない分より自由度の高いデザインができるので、そこは楽しませてもらいました。

――ありがとうございます。最後に、今回『湊渚』を購入されたユーザー、もしくは購入を検討されているユーザーに向けて一言あればお聞かせください。

SWAV:はい。『湊渚』は、デザインとしては深海とか海の生き物とかをモチーフにしたものです。でも、ワールドに馴染むように意識して制作したので、例えば衣装パーツを他のものと組み合わせてみたり、色んなワールドで写真を撮ってみたりと、ユーザーの皆さんの思うように可愛がってほしいです。いろんな遊び方をしても、印象が大きく崩れないというのも『湊渚』の強みだと思います。

アパレルもアバターも、ユーザーの皆さんが千差万別に色んな楽しみ方をしてくれて、思いも寄らない側面が見つかるというのが、制作者にとっての醍醐味だと思います。ぜひ、『湊渚』を楽しんでいる姿を見せてください。

ABOUT US
アシュトン「メタカル最前線」初代編集長
2021年3月より「VRChat」はじめソーシャルVR/メタバースの魅力を発信するメタバースライターとして活動。週100時間以上仮想空間で生活する「メタバース住人」として、AbemaTV「ABEMA PRIME」、関西テレビ「報道ランナー」、TBS「サンデー・ジャポン」ほか多くのメディア取材を受ける。2022年4月に「メタカル最前線」を創刊。