以前、6月頃にVRChat界隈にて「報酬100万円でアバター制作を依頼する」としたツイートが話題を呼んだことを覚えていますか?
この「VRC合法チート研究会アバター制作プロジェクト『チセ』」がついに、10月16日にて発売。本日10月9日からは、アバターの販売に先駆けて試着ワールドをオープンしました。
●ワールドリンク:「チセ – chise – 」体験ワールド
「VRC合法チート研究会」(以下、VGC)といえば、3点トラッキングでも睡眠モーションを手軽にとれる「VRC睡眠システム」をはじめ、アバターの大きさをリアルタイムに変更できる「VRCスケールチェンジシステム」や、「VRCアバターペンシステム」など、痒い所に手が届く便利なアバターギミックを複数販売してきたクリエイティブ集団です。会長をSOU367さんが、開発長をTKSPさんが務めており、先日BOOTHの売上総額が300万円を超えたことでも話題となっていました。
そんな、VGCが1周年を迎え次に仕掛けるのが、完全オリジナルアバター「チセ – chise -」の販売です。これまでのギミック開発とは大きく異なるアバター市場への参入。そもそも企画のきっかけはなんだったのか、どういった狙いがあるのか、気になるプロジェクトの全容をVGCに徹底インタビューしてきました!
「100万円でアバター制作」企画の発端は?
――本日はお時間いただきありがとうございます。まず聞きたいのですが、「VRC合法チート研究会」さんは、これまで主にギミック制作を行ってきたと思います。そもそも、なぜ「チセ」ちゃんの企画が生まれたのでしょうか?
SOU367:こちらこそよろしくお願いします!まず、VGCのグループとしての方針としては、当初は仰る通りギミック制作がスタートでした。ギミックを作って売ろうと。
TKSP:本当の始まりは、「売ろう」どころか、とりあえず便利なギミックを作って仲間内に配布しようとしたものでした。そこに、SOUさんとか、らんさんとかフレンドさんが集まってきて、「これ売ってみたら面白いんじゃない?」という話が出て、現在の形になったという流れです。
SOU367:そうそう。最初は、その売上でみんなで焼肉でも食べれたらいいねくらいのものだったのですが、「VRC睡眠システム」をはじめ販売したギミックが想像以上に売れ始めて。
そんな中、確か売上が30万円を超えたあたりですかね。その頃に「このお金めちゃくちゃあるけど、なんかもっと面白いことに使えないかな」という話が出たんです。それで、じゃあアバター制作ってどうかなと。当初は、メンバー内で使うワンオフアバターを製作しようという予定だったのですが、BOOTHの売上規模が伸びていくにつれ、どんどん夢も膨らみ、「じゃあいっそのこと、本格的にクオリティ高いアバター頼んでみて、販売しちゃうか!」となり、現在の「チセ」ちゃんの企画に繋がったんです。
――なるほど。「100万円でアバター制作者募集」というのはかなりインパクトがありましたよね。そんな中、最終的にかなリぁさんに決定したわけですが、決め手はありましたか?
SOU367:本当に色々なモデラーさんが応募してきてくれました。中でも制作物の実績・お仕事の実績が素晴らしかったことに加え、自身が「ウラモ」くんを使っていてその出来の良さを体験していたこと、お話しさせてもらって「この人とお仕事をしたい!」と思ったことなどが、選考の決め手になりました。
――今回、キャラクターデザイン自体は事前に決まっていたんでしたっけ?
SOU367:そうですね。
TKSP:Pokashiさんという方で、実は私のリアルの友人なんです。ゲーム会社でデザイナーをしている本職の方で、三面図を含めキャラクターデザインをお願いしました。
――なるほど。通りで、先ほど会場に飾られていた三面図も本格的なわけですね。
VRC合法チート研究会結成秘話
――ここからは、少しVGC自体のお話しについて詳しくお聞きできればと思います。まず、VGC自体を結成したのはいつ頃だったのでしょうか?
SOU367:2021年10月16日です。それで、ちょうど1周年の日に合わせて「チセ」ちゃんを販売しているんです。
TKSP:ちょうどその少し前に、「VRC睡眠システム」のプロトタイプのようなものを作っていて、その時は仲間内で使ってもらえればという感じだったんですが、みんなに使ってもらえるにはどうしたらいいかなみたいな話をSOUさんとかに相談していたんです。
SOU367:当初は、導入を教えてもらいながらやって1人辺り2時間とかかかってしまい、「これじゃ大変だ!」ってことでTKSPさんがセットアップツールも一緒に作ったんですよね。そんな中で、「これBOOTHで売ったらめちゃくちゃ人気出るんじゃない?」って話をして。最初は、TKSPも渋ってたんですけど、私がマーケティング戦略はすべて担当するからと、仲間内で役割分担も決めて、グループとしてやっていくことになったんです。
TKSP:そうですね。最初は、僕とSOUさんと、らんさんの3人がメンバーでした。いまは、他にも翻訳担当のzataさん、改変担当のYamaRiceさん、イラスト担当のきよみずさんで計6人で活動しています。
――なるほど。もともとTKSPさんが便利なアバターギミックを開発してみたところ、それにマーケターのSOUさんが加わって、本格的に販売していこうとなったんですね。ギミックの開発というのは、具体的にはどのような作業になるのでしょうか?
TKSP:アバターギミックの場合は、ワールドギミックにおける「UDON」が存在しなくて、シェーダーギミックなどを除けば、プログラムを持っていくことができないんです。なので、例えばアバターのアニメーションを自動化したり、Blenderを使わずにBlendshapeをいじれるようにしたりと。Unityの拡張機能、Blenderでいうプラグインを開発しているという感じです。
――確かに、ワールドギミックだとよく「Udon#」を書いてみたいな話は聞きますが、アバターギミックとなるとまた別の技能が求められるんですね。もともとTKSPさんはUnityエンジニアだったりするんでしょうか?
TKSP:お仕事では使ってないのですが、大学4年間でUnityを勉強していました。Unityが大好きなんですが、残念ながら仕事場ではUnityを使う環境ではなく。ただ、Unityもっと使っていろいろやりたいなと思っていたところ、VRChatを知って、ここならUnityの開発ができるぞと思って始めてみたんです。なので、大体VRChatをはじめて、2、3ヵ月くらいで「VRC睡眠システム」の開発を始めましたね。
――すごい。ギミックの制作をすることが目的でVRChat始められたんですね。ギミックを開発する際の動機とかはどういったものでしょうか?
TKSP:大体は、「あ、面白そう。自分も欲しいし作ろう」みたいなことが多いです。
SOU367:VGCのみんなで、普段VRChatで遊んでいる中で、「これあったら便利なんだけどな」みたいなものを、自分で思ったり、フレンドさんにヒアリングしたりして、じゃあギミックで実現できないかなみたいなことをよくしていますね。
最近の、VGCの方針としては、BOOTHで稼いだお金というのはいわゆるあぶく銭なんで、そういうお金だったり、それぞれのスキルを、本気で趣味にぶつけてやろうぜという集まりになってます。
TKSP:楽しいことたくさんやりたいよねという感じです。
会長SOUのマーケティング戦略 ギミック市場を作りたかった
――ありがとうございます。ちなみに、マーケティング戦略はSOUさんが練られているとのことですが、具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか?
SOU367:細かい部分でいうと、BOOTHのサムネイルを規格統一したりとかもしていますが、一番大きな部分は「市場を丸ごと作っちゃおう」というものです。
――市場を作るというと、具体的にはどのようなイメージでしょうか?
SOU367:まず、私たちがギミックの開発販売を行う前は、アバターギミックって確かにいろいろ出てはいたんですが、あくまで詳しい人向けという印象だったんです。あくまで、開発者コミュニティ向けのような。無料で配布されてたりはするけど、導入が大変そうだったり、知名度としても一般ユーザーまではそんなに届いていないんじゃないかなというものも多くて。
BOOTHで何かを売るとなると、3Dモデルだよねという印象が強くて、市場・文化として、「ギミック開発」というものが本来持ってるパワーをまだ上手く発揮できていないなという印象でした。
――確かに、ギミック販売をメインで行うショップというのはあまり多くないかもしれません。特にアバターギミックとなるとVGCさんのイメージが私も強いですね。
SOU367:マーケティングの概念も、アバターに比べるとまだまだ確立されていなくて。例えば、サムネイルが分かりにくかったり、価格もまちまちでほとんどのものは無料配布だったり。アバターギミックって、アバターを乗り換えたとしても継続で使えるもので、かつ便利なものもできて、もっと需要あるはずなんです。そういったギミックを開発する開発者も、クリエイターとして認められるべきですし、そうした世界観を作りたかったんです。
そこで、サムネイルも力を入れてわかりやすくしたり、価格帯も必需品系は300円で、それ以外の嗜好品は1000円とか戦略を練って価格分けを行ったり。相場感が分かってくると、他のギミック開発者も追随しやすくなって、そうした瞬間に「市場」が誕生するんです。こうした市場づくりを0→1でできるというのは、VRChatやメタバース界隈の面白いところですよね。
――黎明期ならではですよね。しっかりチームを組んでマーケティングまで考えて販売するというのは、最近増えてきた流れの一つだと思います。そうしたところも含めて、めちゃくちゃ注目したいです。
「チセ – chise -」が見せる”無限の可能性”とは?
――ここで一旦、改めて今回販売するアバター「チセ – chise -」の話を伺っていきたいと思います。まず、今回のアバターのコンセプトは何でしょうか?
SOU367:コンセプトは「可能性は無限大」です。最近の売れ筋からしても、ユーザーが「こんな改変をしたい!」「こんなことが出来る!」をイメージしやすい・反映しやすいものが人気の傾向にあると思います。
最近の流れとして衣装モデラーさんの抱え込みも増えていますよね。これも同じ理由で、ユーザー側に「この子とこの衣装組み合わせて、こんな色にしたい」というイメージをどれだけ抱かせられるかがカギなんです。そうした、改変のイメージのしやすさというものを意識して、開発を進めました。
――なるほど。確かに、「チセ」ちゃんはとにかく改変のしやすさ、レパートリーの多さが前面に出ていると思います。
SOU367:そうなんです。今回、「チセ」ちゃんは、基本のカラーが黄色・紫・ピンク・白の4色同梱しているほか、瞳22種類、肌が白1種、褐色2種、タイツはいてるバージョンと水着バージョンもあります。
さらに、ポリゴン数もフルスペックの約13万ポリゴンから、Fallback Avatarにも設定できるQuest Goodランクの約1万ポリゴンまで段階を分けていて、かつQuest Goodランクのデータにも、全48通りのテクスチャの組み合わせをマテリアルとして出力していて、簡単に色改変ができちゃいます。
――なるほど。そうした観点から、この試着ワールドもプロデュースしているんですね。
SOU367:そうなんです。この試着ワールドの特徴として、そうした改変の振れ幅を示せるようにしています。いま言ったような、テクスチャのバリエーションはもちろんのこと、なんと今回はアバター販売前に全25店舗の衣装ショップにもお声がけをさせていただき、事前に衣装対応をしていただきました。
その改変例も展示していて、他にもVGCの「VRCブレンドシェイプ限界突破・合成ツール」をはじめ、外部ツールなどを使った際の改変例まで紹介していて、このワールドに来てもらえれば、「チセ」ちゃんを使ってどんな改変ができるのかイメージが湧くようにしているんです。
――アバターの改変例までこんなに多く紹介する試着ワールドはなかなかないと思います。確かに、中にはスケールまで違ったりして「これ同じアバター!?」となるような改変も。これはイメージ湧きますね。
SOU367:「チセ」ちゃんの販売にあたっては、普段からテクスチャ販売で有名な葉月ねこさんにテクスチャの制作・同梱をお願いしたり、Quest対応にあたっては、Quest対応軽量化代行をサービスとして行っているnyantelさんにお願いしたりと、本当に多くの方にご協力いただきました。
我ながらめちゃくちゃボリューミーなアバターになっていると思うので、ぜひ買っていただけたらと思います。今回、基本価格は9000円(税込、以下同)なのですが、販売後1ヵ月限定で4000円にまで値下げセールを、その後も年内は「じゃぱんくえすた」の期間と連動して6000円、「バーチャルマーケット2022 Winter」の時期と連動して同じく6000円と3回に分けてセールを予定しています。
最後に、年末年始にもセールは考えているのですが、それを最後に以降は通常価格で販売するつもりです。ぜひ、周りの反応も見つつ、検討してほしいです。あなたにとって最強の「チセ」ちゃんをぜひお迎えしてください!
- 商品名:「チセ – chise -」
- 販売価格:9000円(税込)※販売記念セールにて11月16日まで4000円
- 販売ページ:https://goho-cheat-vrc.booth.pm/items/4123536
- 販売元:VRC合法チート研究会(BOOTH)
- キャラクターデザイン:????????????????????????i(Twitter)
- 3Dモデラー:かなリぁ(Twitter、BOOTH)
- 同梱テクスチャ制作:葉月ねこ(Twitter、BOOTH)
●参考リンク
・SOU367(Twitter)
・TKSP(Twitter)
・VRC合法チート研究会(BOOTH)