最近、XR/VR業界を賑わせた快挙といえば、ヴェネツィア国際映画祭のXR部門でプレミオ・ビサト・ ドーロ/金鰻賞の最優秀短編賞を受賞したVR演劇「Typeman」(タイプマン)の大ニュースが記憶に新しいですね!
さらに英・レインダンス映画祭にて11月3日~11月6日の4日間、VRChat内で「Typeman(タイプマン)」の無料公演が行われることも決定し、ますます盛り上がっています。
さて今回メタカル最前線では、「Typeman」ひと足先に作品の鑑賞、そして監督の伊東ケイスケさんに特別にお話を伺うことができました。
なかなか聞くことのできない貴重なお話と、VR演劇という新しい時代の最先端の舞台を体験し、感じたことなどのレポートも交えてご紹介していきます!
観劇レポート VRで新しい時代の演劇を
実はVRのなかで演劇を観るという体験においてどうなるのか全く想像がつかず、現実世界で演劇を観劇する感じのイメージで臨んだのですが、想像とは全くちがうもので鑑賞中ずっと終始驚くことばかりでした。
タイプマンの造形も素晴らしく、タイプライターというものは少し懐かしく感じるも、今の世代の人たちには新鮮にうつるのではないでしょうか。そんなタイプマンはただ見せてくれるだけではなく、いろいろな体験を通して舞台の世界の中にいつの間にかいざなってくれます。
舞台が始まると同時に押したボタンからはぽんと文字が溢れ出し、何が起こるのか期待が膨らみます。そして場面が変わるとひとつのタイプライターが現れ、観劇者はそれに触れることができます。タイプライターのキーが軽快なタッチ音とともに鳴り出すと、タイプマンの上に文字が現れ、それはいつの間にか一つの単語になっているのです。
そして、タイプマンは観劇者にひとりずつ手紙を渡してくれます。手紙を受け取った時の高揚感と没入感はたまらないものでした。時間が経つにつれ、時代はタイプライターを必要としなくなっていきます。その流れの描写はとても切なく……。
それでもタイプマンは諦めません。「I AM HERE(私はここにいる)」という言葉とともに、音楽を奏でだし、観劇者を楽しい世界へ連れて行ってくれるのです。
美しい舞台ワールドが、VRならではの光と音楽の美しい演出の中で、演劇にいつの間にか参加していたこの喜びは、ほかの舞台では味わえない新しい体験でした。
前述にある無料公演の応募枠は残念ながら埋まってしまったのですが、ぜひ参加できる機会がありましたら、観劇、いやタイプマンと一緒に体験していただきたいです!
伊東ケイスケ監督特別インタビュー
――今回は受賞おめでとうございます。「Typeman」とても素晴らしかったです。まずは、そもそも、どうしてVRでの作品作りを始められたのかについてお聞きしてもよろしいでしょうか。
伊東ケイスケ監督(以下伊東監督)
VRアニメーション作品は今回で、4作品目になります。もともと僕はその前からスクリーン映画の方で、ピクサーみたいな3D作品を2作品くらい作ってたんですね。そこからVRでの映像作品にシフトしてきました。
僕、キャラクターが大好きで、キャラを作ることに熱中してたんです。その頃にVRっていうものができ始めて、「これなら自分の愛するキャラクターがその場にいるように動かして表現できる!」ってことに早々と気づきました。それ以来VRでアニメーションを作るのが僕にとっての理想型に近いと感じて、その後はVRアニメーション作品を作り続けています。
――なるほど。VRでの作品は4作目とのことですが、、今回のように「VRChat」などを使って、リアルタイムに演劇を行うという形式はこれまでにあったのでしょうか?
伊東監督 今回が初めてです。やはりマルチプレイっていうのにすごく惹かれたのと、今回の演技を作っていただいたアクターさんのYAMATOさんという方がいらっしゃるんですけど彼にVRChatで演技してもらったらすごいことが起きるんじゃないかな、じゃあやってみようと思ったのが大きなきっかけです。
3作品目までは自分自身でアニメーションをつけて動かしていたのですが、今回はYAMATOさんをはじめモーションアクターさんに入ってもらうということで僕のキャラクター表現をちょっと進化させることができたかなと思います。
――なるほど。アクターさんがきっかけで企画が生まれたんですね。ちなみに、製作期間に関してはどのくらいだったのでしょうか?
伊東監督 製作期間についてはだいたいぜんぶで半年くらいです。半年のうち半分が企画で半分が製作、という感じでした。大体去年の8月9月くらいから企画を考え始めまして、大体年明けてから1月2月くらいが結構大変な時期だったんですけど、そのまま5月に向けてですね、作っていったって感じですかね。
VRChatで活躍するクリエイター達も参加
―ー今回、クレジットとかを見るとYoikamiさんをはじめ、タナベさんやヨドコロちゃんなど、VRChatで活躍されているクリエイターさんたちが製作に携わっているのですが、その意図というか、参加するようになった経緯などをお聞かせいただけますでしょうか。
伊東監督 先程も言ったようにVRChatを使わずにアニメーションを作っていたので、Unityはある程度使えたんですけど、VRChatになるとUdonとかがでてきて、もう全然わからずで。もう製作期間も半年しかないわけだから、誰かアドバイザーがいないと厳しいだろうということで、まずお声かけさせていただいたのがVR蕎麦屋タナベさんなんですね。
まず外部の方にまずご紹介いただいてタナベさんと繋がって、その中でVRChatでワールドだったり色々作るの詳しい方はいますか、とお聞きしていくなかでヨドコロちゃんがアサインされて、色々教わりました。
作品中に音楽を使った演出が途中にあったと思うんですけど、そこでらくとあいすさんが制作にかかわっているワールド「Amebient」を見させていただいて、ご紹介いただけませんか、という話になり、アクターさんも色々使っていこう、となった時にYoikamiさんをっていう形でいろいろと繋がっていきました。
本当にタナベさんから繋がり、今のチームになったので、彼らがいなかったら絶対に完成しなかったな、ととても感謝しています。
―ー今後も例えば次回作、の構想など、例えばまた次もこのチームでこのVRチャットを使ってとかやってみたいなってことはありますか。
伊東監督 次回作については、もう実は動いていて、既にちょっと早いんですけど来年の5月にそれでVRChatを使うかどうかっていうのはまだ決まっていないんですけども、作ることと大まかなテーマは実は決まっておりましてそれに関しても今までの作品と同じようにキャラクターや人との繋がりっていうものを大切にするような作品になっていくかなと思っております
ーーありがとうございました!
●参考リンク
・「Typeman」作品紹介ページ
・伊東ケイスケ(Twitter)