みなさん、U-Stella incという企業を知っていますか?
2021年3月に初のオリジナルアバター「CCD-0500[FEE](通称:フィーちゃん)」を販売開始以降、ソーシャルVR界隈で大きく知名度を上げた同社。3万5000円という当時としては最高級の価格設定と、その完成度、そしてバーチャルマーケットやNeosFestaをはじめ、様々なバーチャルイベントへの企業出展など、様々な場面で話題を呼んできました。
最近では、今年7月より1ヵ月1体ペースで新作アバター「PROJECT SOLCIEL」の制作販売も行っており、精力的に活動をしています(関連記事)。しかし、そんなU-Stellaですが、一体アバター以外にはどんなことをしている企業なのか、なぜVRChat市場に力を入れているのかなど、その全貌について知っている方は少ないでしょう。
本日は、そんなU-Stellaの代表取締役社長しらとりこよみ(Twitter)さんに直接インタビュー!いったい、U-Stellaとはどんな企業なのか、アバター販売や事業に込める想いなどを伺ってきました。キャラクター開発とアバター販売のジレンマなど、U-Stellaをより深く知られるトピックもお聞きできたので、ぜひ最後までご覧ください!
もとは東方二次創作から U-Stellaの事業内容は「キャラクターコンテンツ」
――本日はお時間いただきありがとうございます。まずは、U-Stellaの簡単な概要についてお聞かせください。
しらとりこよみ(以下、しらとり) 本日はよろしくお願いします。U-Stella Group Holdings執行役会長およびU-Stella代表取締役CEOのしらとりです。現在、U-Stellaでは主にバイノーラル音声作品や音声素材集、Cevio AIなどの音声系と、3DモデルやLive2Dモデルなどのキャラクター系、あとはLINEスタンプや抱き枕などのキャラクターグッズ系の大きく3つを販売しています。
――なるほど、かなり幅広いですね。ソーシャルVR界隈では、U-Stellaといえばフィーちゃんの販売が特に印象的だと思います。アバターに関する事業は、全体で言うとどのような位置づけなのでしょうか?
しらとり 音声作品もそうですし、アバターもそうですが、U-Stellaがやっていることは一貫してキャラクターコンテンツ事業なんです。キャラクターやそれをとりまく世界観を表現する媒体として、音声作品だったり、アバターだったり、グッズだったりがあるというイメージです。
――そもそも会社としてはいつ頃に設立されたのでしょうか?
しらとり 設立は2019年の3月ですね。私、もともとは東方Projectの同人界隈で活動をしていたんです。そのころに、音声作品の二次創作コンテンツを作って頒布していて。当時、そこのサークルメンバーたちと次はオリジナルの音声作品を作ろうという話になり、そのタイミングで起業しました。
――なるほど。二次創作から一次創作にシフトするタイミングでの起業だったんですね。最初はどのような作品を作っていたんでしょうか?
しらとり それこそ、いまもU-StellaのTwitter公式アカウントのキャラクターなんですけど、「ユーレイちゃん」というキャラクターを作りました。引っ越しした先のアパートで、主人公が寝ていたら、夜にユーレイちゃんが添い寝してくるという内容で、バイノーラル音声作品、いわゆるASMRジャンルですね。
――もともとはユーレイちゃんのコンテンツ制作がメインだったんですね。
しらとり そうですね。そのころには、キャラクターIPの展開ということで、Pixiv Factoryなどを使ってグッズ制作なども行っていました。
フィーちゃんは当時の最高級アバター
――そこから、ソーシャルVR向けのアバター市場に参入されたわけですが、それはどのような経緯だったのでしょうか?
しらとり アバター販売事業を始めたのは、フィーちゃんの販売を開始した去年の3月末頃ですね。私自身は、2019年の8月頃にVRChatをはじめて、そこから1、2年ほどは普通にいちユーザーとして遊んでいたんです。そうして遊んでいく中で、ふとワンオフアバターが欲しいなと思って、それでせっかくなら自分がやりたいことを詰め込んだアバターを販売しようとスタートしたのが、フィーちゃんの企画でした。
――なるほど。2021年3月頃ですか。フィーちゃんといえば、高額アバターのひとつとしても知られていますよね。当時の反響はどうでしたか?
しらとり そうですね。販売当初は、通常価格が3万5000円、初回セールで3万円で開始しました。当時だと、YOYOGIMORIさんの「白鳥」くんが一番高額だといわれていて、あれが3万4000円くらいだったので、VRChat向けアバターとしてはおそらく最高額のアバターだったと思います。
ユーザーからの反応としては、やはり「高い」というのはよく聞きました(笑)ただ、その分機能も充実していて、購入者満足度は高かったかなと思います。フィーちゃんの購入者って、アバターを買うのはフィーちゃんが初めてという方が多いんです。アバター自体もExpressionなど機能が豊富なので、blenderやUnityが得意じゃなくても様々な表現ができるようになっていて、価格以上の価値は出せたかなと思います。
――1体目にして、VRChat向けアバターで最高額の価格帯を狙うというのはかなり強気な値段設定ですよね。
しらとり 実は、もともと高価格帯で売ろうというつもりはなかったんです。先ほども言った通り、もともとは自分のワンオフアバターとして作ろうと考えていて。自分だったらこれが欲しいな、こういう機能があったら使いやすいなというものを突き詰めたんです。
そうした中、制作過程でアバターギミックを追加したり、デザイナーが変更になったりと、試行錯誤をしていったら想定以上に予算が高くついてしまって。ただ、その分価値の高いアバターができていることには確信が持てたので、あの価格帯で販売しました。とはいえ、最近は5000円で衣装データが2種類以上デフォルトで入っていたり、blendshapeなど機能も充実していたりして、当時ほどは差別化がうまくできていないなと悩んではいますが。
――なるほど。それ以降は、1年以上アバターの販売自体は行っていなかったかと思います。そもそも、フィーちゃんを発売したときには、継続的にアバター制作を続けようという計画はあったのでしょうか?
しらとり 実をいうと、フィーちゃんが完成した時点で、当時の担当モデラーさんが辞職されてしまったんです。それで、いったんアバター制作はストップしてしまって。その間にも、いろいろな企業さんも参入されてきたり、アバター数も指数関数的に増えていって、ここ1年間くらい新しいアバターが出せていなかったのは正直もったいなかったなと感じています。
デザイナーの世界観を前面に 「ソルシエル」の試みについて
――そして、今年7月頃から新たに展開を開始したのが、「PROJECT SOLCIEL」ですよね。これはどういった経緯で生まれた企画なのでしょうか?
しらとり PROJECT SOLCIELは、企画自体は5月から動き出しました。だるだなさんというデザイナーさんが、ちょうどそのタイミングで弊社にジョインしたんです。もともと、「⊿S.I.N」さんのところで、「Leeme -リーメ- & Reeva -リーバ-」や「Shaclo -シャーロ-」のテクスチャを描いている方で、フィーちゃんを制作するときにキャラクターデザインをお願いしていました。そこから1年以上の付き合いで、5月に専属契約という形になりました。
それで、だるだなさんに提案して、だるだなさんが表現したい世界観を前面的に押し出したアバターを作ろうとなりました。アバターのテクスチャって見た目の大部分を左右するものなので、そのデザイナーが描きたい世界観を中心に制作したらいいものができるんじゃないかと思ったんです。
――なるほど。ということは、ソルシエルの設定もだるだなさんが考案されたんですか?
しらとり そうですね。だるだなさんに原案を考えてもらって、それを弊社のシナリオライターなどで広げて形にしたという感じです。
――PROJECT SOLCIELの特徴といえば、なによりも「10体連続毎月リリース」という物量のインパクトですよね。これは、どういった流れで決まったのでしょうか。
しらとり 10という数字には特に意味はないのですが、ある程度まとまった数のキャラクターを出して、世界観で売っていきたいなと思ったのがきっかけです。現状、アバター制作には10名程度のクリエイターさんを雇っています。キャラデザはキャラデザを、モデラーはモデリングを、PB設定はPB設定をという形で、それぞれ細かく分業体制を敷いていて、生産ラインを確保しているので、スピーディーにクオリティの高いアバター制作を可能としています。
――さすが、企業販売だからこそできる生産体制ですね。それだけ多くの人がかかわっていて、価格は前作のフィーちゃんと比べるとかなり安価な5000円とのことですが、この価格設定にはどのような意図があるのでしょうか?
しらとり まずは、より多くの人にU-Stellaのアバターを届けたいという部分が一番多いです。これは、僕の体感なんですが、高価格帯アバターを使うユーザーと、一般的中価格帯のものを使うユーザーとは、層が異なるなと思っています。前者は、ほかの人と被らないアバターが欲しい、後者は逆にほかの人と同じアバターを使いたいというようなイメージですかね。選択肢を広げる意味でも、さまざまな価格帯の商品を用意していきたいなと考えています。
アバターもキャラクターIP? U-Stella独自の「世界観ウリ」とコンテンツ展開
――そういえば、フィーちゃんはCevioAIなどアバター販売という枠にとらわれない幅広いキャラクター展開を行ってきたなと感じます。今回、10体のアバターで同じ世界観を表現するという試みとのことですが、アバター以外への展開も視野に入れているのでしょうか?
しらとり もともとはVRChat向けアバターという部分しか考えていませんでした。ただ、進めていく過程で、面白いお話をいただきまして。実はいま裏でPROJECT SOLCIELをモチーフにしたスマホ向けゲームの制作も進めています。
――スマホ向けゲーム!面白そうですね。どんなゲームになるんでしょうか?
しらとり ソルシエルアバターをキャラクターとして用いるというところまでしか現時点ではお伝え出来ないのですが。アバターに限らず、キャラクターをIPとしてどう展開していくかということは常に考えています。キャラクターコンテンツの展開って意外と選択肢がなくて。アニメやゲーム、漫画、ラノベあとは、最新領域だとAR/VRとかくらいなのかなと。アニメはなかなかハードルが高いですし、せっかくキャラクター制作をしているわけですから、もっといろんな売り方、表現の仕方を考えていきたいですよね。
――アバターについてでいうと、一般的なキャラクターIPとは異なる性質もあると思います。一番典型的なのは、いわゆる一般的なキャラクターIPだったら、キャラクターってあくまで消費する対象ですが、アバターは自分自身を投影する存在でもあるわけですよね。そこの難しさとうか、ジレンマみたいなものってありますか?
しらとり そうですね。もともと私は二次創作界隈の出身で、二次創作が豊富なコンテンツというのに多く触れてきました。それこそ、東方Projectとか、アズールレーンとかです。ああいったコンテンツって、ユーザーの解釈する余地が多いんですよね。
アバターも一緒で、もちろん見た目がかわいいかというのは重要なんですが、そのうえで例えば対応衣装が多いとか、改変後の姿が想像しやすいかみたいな部分が結構大きいと思います。
設定自体は細かくすればするほどいい、突き詰めれば突き詰めるほど世界観が強固になるんです。ただ、それをどこまでユーザーさんに公開するのか、解釈の余地をどう残していくのかという塩梅は常に考えていますね。
――なるほど。どこまで開示するかというのは確かに難しい問題ですね。逆に、あまり公開しすぎてしまうと、そこに自分なりの解釈を入れ込む余地がなくなってしまう。現状でいうと、そうした設定はBOOTHの説明欄などに書いてあるくらいですか?
しらとり 実をいうと、現在まさに世界観設定の部分を練り直している最中なんです。U-Stellaの世界観とは一体何なのか。ぼんやりと、ユーレイちゃんも、フィーちゃんも、ノイやレノン、メロルなどのソルシエルたちも、あくまで平行世界などではなく、ひとつの世界観のなかにあるというイメージはできているのですが、それをどう表現するか、詰めていくか。シナリオライターさんが最近、弊社にジョインしたので、そこは目下詰めているところです。
ゆくゆくは、それをユーザーの皆さんにも届けられるように展開していきたいなと思っています。まずは、取り急ぎ設定資料集のようなものは近いうちに公開したいなと考えています。
――キャラクターIPとしてしっかりと設定が練り上げられたアバターって、VRChat市場ではまだまだ少数派ですよね。見た目へのこだわりや、「属性」という意味では設定があることも多いですが、それが「世界観」まで広げられているケースは少ないと思います。アバターとキャラクターがどう融合していくのか、U-Stellaさん独特の雰囲気につながっていると思うので、これからも注目してます!
●参考リンク
・U-Stella公式サイト
・U-Stella公式Twitter
・U-Stella公式BOOTH
・しらとりこよみ(Twitter)
本記事は、U-stella inc.さまよりご依頼を受けたPR記事となっております。
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