株式会社Vってどんな会社? VRChatやDiscordに猛プッシュする企業の正体を追え【メタバース色な企業探訪】

株式会社V。大丸松坂屋アバター、『劇場版 きんいろモザイク Thank You!!』公式ワールド&衣装、犬山たまきコラボ、オリジナルアバター『キール』など、様々なVRChat向けコンテンツを送り出し、そしてなにより、この「メタカル最前線」の現・運営企業でもあります。

VRChatをやっていて、その名前を聞いた人も多少はいるはず。でも同時に、「あの会社、何者?」と思っていたりしませんか? 猛スピードで走っているけど、あんまり告知を打たないし、どんな人がいるかもイマイチ不明。「そもそもなんでVRChatにこんなプッシュしているんだ??」と思うのもやむなし。

そして、「よくわからないもの」ほどあやしく見えてしまうもの。「いったい何を企んでるんだ……!」と見ているVRChat民も多いでしょう。

とはいえ、実際はどんなところなのか? そこで今回、”謎の企業”こと株式会社Vについて、事業内容や関わっている人など、幅広く調査してみました!

Vってこんな会社

株式会社V(公式サイト公式X)は、2019年4月22日設立。事業内容は「インターネットサービスの企画・開発・運営」で、日本国内におけるVRChat公式パートナー企業の一つでもあります。

主な事業は4つ。順にご紹介していきましょう。

メタバース領域参入支援事業

ワールド制作、アバター・衣装制作、販売プロモーションまで、メタバース領域への参入を一気通貫で支援する事業。VRChat民になじみ深いであろう、大丸松坂屋百貨店アバター、『劇場版 きんいろモザイク Thank You!!』ワールド&衣装、犬山たまきコラボ衣装、そして『キール』などは、この事業によるものです。

VRChatに限らず、ZEPETO、Roblox、Fortinteなど、主要なメタバースは一通り制作・サポート対応できるオールラウンダーなのも特徴。VTuber・猫宮ひなたさんとFortinteマップを作ったり、ZOZO NEXTのデジタルアイテムをZEPETOで販売していたりしますよ。

メディア・広告事業

当メディア「メタカル最前線」と、VRChatアバター改変情報を投稿できる「kaihen」の運営に関わっています。

「メタカル最前線」はもともと、初代編集長・アシュトンさんが創設したメディアでしたが、2023年10月2日にV社へ運営移管され、現在に至ります。なお、よくある誤解として「V社のオウンドメディアになった」がありますが、「メタカル最前線」は現在も編集権はV社から独立して運営されています。

移管当時、V社代表のAliceさんはアシュトンさんに、「俺が悪いことしたら真っ先に報道して息の根止めていいよ!」と告げたそうです。現編集部も同じスタンスで臨んでいます!

Discord立ち上げ運営支援事業

Discrodコミュニティの運営支援もやっています。代表的なものは、国内最大のRobloxコミュニティ「ロブコミュ-JP」、ゲームコミュニティ情報サイト「RUGs Supported by Intel」の公式Discordサーバー、そしてVRChatコミュニティの一つ「VRC-JP」が挙げられます。その他の運用実績も豊富らしいですよ。

バーチャルアイテムEC事業

平たく言うとBOOTH、SUZURI上のショップ「V WORLD」での制作・販売です。アバターや衣装、最近はモーションデータなんかも販売しています。

どんな人がいるの?

事業内容をザッと見てみると、「メタバースとDiscordに強い」というイメージができると思います。ここに特化しているのはなかなかに尖っているところ。

では、どんな人がこの会社に関わっているのでしょうか? 株式会社Vに関わる人(業務委託など含む)のうち何人かから、お名前と「いつごろから、なにをしているか」、そして「Vってどんな会社だと思う?」という質問をしてみました!

JONER(ジョネ) 「リアルクローズ集会」イベント主催

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

2023年の8月頃からkaihenの運営・企画等のお手伝いをさせて頂き、現在は主に衣装製作等のディレクションを担当させていただいています。もともとはVRでただ遊んでいただけだった自分にとっては初めての挑戦の毎日ですが、おかげさまで成長を実感しています。楽しい。

■Vってどんな会社だと思いますか?

VRの世界に暮らすみんなにとって、より充実した世界を一丸となって全力で模索し、全力で叶えていく。そんなポジティブなエネルギーで満ちていて、エネルギーから新たなエネルギーを生み出すような、力強い印象を持っています!

さーまる 元「With VR」運営

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか

7月中旬より新事業のディレクターをしながら、動画制作の経験を活かして大丸松坂屋百貨店さんの案件などで動画撮影や素材制作等を担当しています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

メタバースの会社って一般の人にはピンとこないかもしれないですよね。VRChatを仕事の場にしているフレンドリーなメンバーが集まっています。実はVRChat内で名が知られているあの人もいたんだ!と入って驚きましたね。メタバース原住民のメンツがVRChatをより良くしようと仕事をしている会社なので、今後注目してもらいたいですね!

Y(仮名) CGデザイナー

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

昨年末から、3Dモデルの制作や制作支援に携わっています。現在はIT系メガベンチャーで培ったアーティスト経験を活かし、V社のクリエイティブ業務全般の制作進行や、ディレクター陣への技術サポート、育成を担当しています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

多くの人が、VRChatに進出する企業に対して、異邦人や侵略者のような印象を持っていると思います。
「何がしたいのかよくわからないけど、僕たちの文化を理解せず、バズワードに釣られてただ金儲け目的で参入してきたんじゃないか」というような。

もちろん、確かにV社にはネイティブ(元からのVRChatユーザー)だけでなく、ノンネイティブ(ビジネスを通じてVRChatを知った人)も多く在籍しています。
しかし、私たちV社社員の共通認識は、「VRChatで暮らす人々がより楽しく過ごせるようにしたい」という想いなんです。

V社は控えめな印象がある会社かもしれません(正直社長のAliceを初めシャイなメンバーが多いです)が、VRChatのみんなにとって身近な存在であり、一緒にVRChatを盛り上げていく仲間であると自負しています。 

東雲りん 「メタカル最前線」編集長

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

事業譲渡を行った2023年10月から株式会社Vで働いています。業務内容としては、メタカル最前線の編集長として執筆、編集をはじめメタカル最前線に関わる全般を行っています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

編集長になってから本格的にやり取りをするようになりましたが、もっと直接口出しをするのかな?って思っていたら、かなり裁量が多くて驚きました。もちろんメディアとして独立性を持てるように立ち回るつもりでしたが、必要以上に身構えずに済んだのが正直なところです。 自分の描きたい方向性に対して、実現性を高めてくれることをしてもらっているのでとても助かっています。

ひもの 「メタカル最前線」創設メンバー・V社ディレクター

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

元々はバンドマンで、明日のことなど考えずにフラフラしていた人間です。2021年ごろからVRChatで遊び始め、2022年にメタカル最前線のコアメンバーとして参画。2023年にはAshtonLabで総務を務めました。同社の解散・メタカル最前線の事業譲渡からの流れで株式会社Vへ参加することになり、今はVRChatにおけるBtoC向け企画のディレクターなどを担当しています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

「こうしたほうがおもしろい」を実現させていく会社だと思います。そのためにみんな大真面目に、時には馬鹿になって働いています(馬鹿なのは俺だけかもしれない)。

ベンチャー企業ということもあり、型にはまらない自由度を持ちつつ、企業としての理念はきちんともって運営しているイメージがあります。ここはAliceさんが数々の企業を運営してきたノウハウが詰め込まれているんでしょうね。

ひゅうがなつ Boothショップ「ひゅうがなつみかん」オーナー

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

1月からゆったりペースで参加させていただいてます。現在はいただいた案件の3D制作や、モデルの監修作業を担当しています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

VRCの間口を広げようと頑張っている印象です!

REITO

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

2023年9月から営業部門の事業統括をしています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

V社の特徴は、VRの住民によるVRの住人のためのVR企業という印象です。バズワードとか関係なくただただ、みんながハマってることを本気で遊んでるイメージです。

八桜 Boothショップ「夢幻のアリス」オーナー

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか? 

2024年の5月半ば頃からインターン生として、ディレクションを中心にアバターの衣装対応やデバッグ作業を学ばせていただいています。

■Vってどんな会社だと思いますか?

メタバースをツールとしてビジネスをやっているというよりも、今のメタバースを最高に盛り上げたいと考えている会社だと思います。まだ入って間もないのですが、Aliceさんからは「みんなが思う最高に面白いメタバースコンテンツを作ってくれ、そのための土台作りとバックアップは俺に任せろ」と支えてもらっている印象です。

SOU367 VRC合法チート研究会 会長

■V社ではいつごろから、どんなことをされていますか?

23年末ごろから、メタバース領域(主にVRChat)での制作進行において、コンサルタントに近い形で社長のAliceさんと関わり始めました。現在は気づいたらプロジェクトマネージャーとして、V社企画のメタバース向け制作のほぼ全てに関わる立場になっていました。なんででしょーねー?(笑)

具体的には、V社でリリースした「きんいろモザイクVR」でいうと、企画としては衣装制作がメインですが、付随して衣装制作・ワールド制作・お披露目会企画・監修依頼……と、リリースに向けて各独立した制作や販促企画を同時並行で進める・纏める必要があるため、全体を把握して管理(連携補佐含む)する、全体を見る役回りでした。

最近は、営業さんについていって企画の取りまとめや技術顧問に近い役回りもしつつ、場合によっては取引先企業様とのやりとりやロードマップの作成、企画立ち上げやクリエイターさんのアサイン・リクルート、V社内のディレクター・制作進行メンバーのバックアップ、新入社員やクリエイターの教育、他部署との連携や合意形成などなど……企画と人に関わる全てを、色々任せていただいてます。

そのほか、たまーに自分で手を動かして制作に関わることもあります。デザインや図面作成、音響制作、プレスリリース執筆などなど、元々がクリエイターなので(今もですが)、手を動かしての制作も好きです。

■Vってどんな会社だと思いますか?

良くも悪くも「自由」で、熱量がものをいう会社だなと。V社は方針として「キャラクターIP」や「版権物」と言われる物のメタバース(VRChat)向け制作などを多く行っているのですが、熱量があればいわゆる「企画持ち込み」に近いことができる環境でもあります。

例えば、「今!このアニメが熱い!きっと流行るから版元の〇〇に営業かけましょう!」という発言があれば、そのまま営業→制作につながる可能性が大いにあります。作品のファンからすると、憧れの作品に関わる仕事ができるので、とてもやりがいがあると思います。

一方で、熱量がなくても制作の仕事に関わることもできますし、せざるを得ない場面も往々にしてあると思います。熱量をぶつけてやりたい仕事をするのも、ただ淡々と制作をこなすのも「自由」、その自由を尊重する度量とノリの良さを兼ね備えた会社だなと思います。 

代表取締役・Aliceさんインタビュー

最後にこの人にお話をうかがいましょう。株式会社V 代表取締役のAliceさんに、いくつか質問をさせていただきました。

Alice プロフィール

AIレシピ提案アプリを開発するスタートアップを共同創業。その後、株式会社バンクに入社。即時買取アプリ「CASH」と後払い旅行サービス「TRAVEL Now」の立ち上げを担当したのち独立。2019年に株式会社Vを創業後、複数のコンシューマー向けサービスを開発。人気ゲームタイトルでアジア最大ユーザー数のコミュニティを運営。

Xアカウント

――株式会社Vを立ち上げた理由を教えてください。

Alice 自分のキャリアは、アプリやWebサービスなどのプロダクトを創り続けて「世の中の誰もが使うようなサービスを自分たちでつくる」ことを目指して、一貫してやっていました。結果、今まで関わったサービスはテレビや雑誌など色んなメディアに取り上げられたり、Apple Storeのランキングで総合2位までいったり、周りにも恵まれて、すごく良い経験をさせてもらっていました。

そして、V社はもともと、ファッションテックサービスを展開する会社として2019年に創業しました。サービスも順調に伸びて、取扱ブランド数もどんどん増えていっていたのですが、直後にコロナが来て、全てを失ってしまいました。

落ち込んで、不貞腐れて一生ゲームをやり続けていたのですが、2020年に「コロナのような世界になっても、永遠に楽しめるゲームの世界をつくりたい」と思ったんです。これが今の事業の源流になっています。あと、世界のトップ経営者の動きを見ていても、「人類の進化の行き先が宇宙と仮想空間以外にいまのところない」とも思っていましたね。

――VRChat向け事業を始めたのはなぜですか?

Alice 取り扱いプラットフォームとしては、最初は「フォートナイト」から始めて、VRChatは2番目でした。もともと、周囲にクリエイターが多かったこともあって、彼らに呼ばれて遊びにいったところから、徐々に事業として取り組み始めました。ちなみに、現在は「ZEPETO」と「Roblox」でも事業を進めています。

――「メタカル最前線」を事業として受け持ったのはなぜでしょうか?

Alice 当時の編集長のアシュトンさんは、もともとV社で「kaihen」のサービス運営を手伝ってくれていました。なので、「メタカル最前線を閉じるかもしれない」という話は割と早い段階から聞いていました。

シンプルに、この世界のことを伝えるメディアがなくなってしまうことは、この世界の未来にとって大きな損失だし、何よりもったいない。そう思ったので、いろいろと話をしていき、V社で運営・ライター含めた編集部全体を有償化することに決めました(※注釈:それ以前の「メタカル最前線」は無償での活動体制だった)。

振り返ると、V社の掲げている「バーチャル空間で生きる人々が、この世界でより良く生き続けていくために、暮らせる時間が増えるように、世界の仕組みをつくる会社になる」というミッションを体現した形だったなと思います。

※参考:先代編集長・アシュトンさんによる当時の回想

――よく、「謎の企業」と言われることについては、どう思われますか……?

Alice 把握しています! こうなってしまったのは、PR的な側面から、自分から「自分のことすごいだろ!!!」っていうのが苦手だったので、あまり言わないようにしてきたんですよね。結果、告知そのものは少なくなってしまい、「謎の企業」と思われているのかなと。今後はもっと発信していければ。

――今後、V社はどんなことをしていきたいですか?

Alice 「バーチャル空間で生きる人々が、この世界でより良く生き続けていくために、暮らせる時間が増えるように、世界の仕組みをつくる会社になる」をマジでやろうと思ってます。今も続けています。

この世界には、素晴らしいコンテンツやクリエイティブをつくっている人たちがたくさんいる。そのことを世界はまだ知らない。VRChatでもっと生きていきたいのに、すごく良いことをしているのに、全然違うことで生計を立ててる人もいっぱい知ってる。

僕たちがこの領域において日本を代表する企業になることで、それを証明する。この世界の可能性を世界に見せつける。ビジネスとクリエイティビティを両輪で走らせることはすごく難しいし、僕たちだって毎日悩みながら、色んな人に迷惑をかけたり助けてもらいながら、それでも世界を変えたくて必死にがんばり続けています。

V社は、それが出来る可能性を持った稀有な会社だと思っていて、今いる仲間たちと、これから新しくやってくる仲間たちと一緒に、頂点まで駆け上がります。採用も絶賛全ポジションしてるので、お気軽にご応募ください!

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