VRChatは日本時間5月19日、最新の「Developer Update」を発表しました。タイトルは「Introducing the Creator Economy」。そうです、クリエイターエコノミーに関する発表です。実際のリリース日に関しては、まだ未定とのことですが、どのような機能にしていくのか計画の一端が露わになったため、公式のリリースとともに紹介していきます。
そもそも「クリエイターエコノミー」とは?
「クリエイターエコノミー」は、2年以上前となる2021年4月14日に開催した「VRChat Developer Stream」にて発表されたVRChatにて現在検討中の決済システムです。同配信では、約2時間に渡りVRChatが当時開発中とした機能の実装ロードマップを発表。そのなかには、「Avatar Dynamics」(Phys Boneなど)や、UIのアップデート、グループ機能など現在すでに実装されているものも含まれていました。
そこから約2年間、特段の言及がなく「いつ実装されるのか」「一体どんな機能になるのか」と期待されていた「クリエイターエコノミー」の今後の計画に関して、ついに言及がなされたということです。
具体的にはどのような機能なの?
VRChatには様々なクリエイターがいます。ワールドクリエイター、アバタークリエイター、配信者、ロールプレイヤー、コメディアン、ミュージシャンやアーティスト。そんな様々なタイプのクリエイターのすべてに対して、ひとつだけの機能で補おうとするのは無理がありますよね。
そのため、この「クリエイターエコノミー」機能では、複数の方法を提案していくとのこと。そのなかでも、まずは「グループ機能」を使ったマネタイズ手段を提供していきます。この有料グループに参加することで、特定のロールを付与し、他の人がアクセスできないルームやアイテムを得るといったようなリターンが設定できます。VRChatの中に、ネイティブで「FANBOX」や「Patreon」のようなサービスが生まれると考えるとイメージがつきやすいかもしれません。
例えば、ワールドクリエイターであれば、これまで「Patreon」で行われていたような、「VIPルーム」へのアクセス権を販売するようなことや、イベンターであれば同機能を使って特定の人しか参加できないイベントを開催するなど、VRChat内でのマネタイズ手段が増えるということです。
そして、こうしたグループへの参加はウェブサイトや他サービスを経由することなく、VRChatのアプリ内でいくつかのボタンをクリックするだけで完了するとのこと。これらの機能をなるべく簡単に提供することがゴールだと伝えています。
アバタークリエイターに関して
アバターに関しては、VRChatのコンテンツの中でも特にデータの売買が外部サービスで行われている領域です。日本ユーザーにとっては、pixivの運営する「BOOTH」がなじみ深く、同サービスは2022年11月ににVRChat社と公式に提携を結んでいます。
こうした外部にて販売されている高品質なアバターデータを、VRChat向けにセットアップし、Unityを介してSDKを用いてVRChatにカスタムコンテンツとしてアップロードするというのが、これまでの主なアバターの利用法でした。
VRChatもこの状況は把握しているようで、「そうした状況が、いま複雑になっている」と言及しています。そして、こうした現状を「合理化(streamline)」するアイディアを持っているとも伝えています。
しかし、これは「クリエイターエコノミー」導入の初期段階では大幅な変更はせずに、まずはグループ中心のシステムに集中するとのことです。この点に関する今後の動向については、追って発表されると思われるため、特にアバタークリエイターに関しては開発の状況を追うことをおすすめします。
まずはクローズドベータから
さて、まず実装される「グループ中心のクリエイターエコノミー」に関してですが、正直今回発表された内容だけでは、まだ実際のところ、例えばどのようなリワードが設定できるのかなど詳細な仕様については明かされていません。
公開された動画からも伝わる通り、「クリエイターエコノミー」の開発についてはVRChat社としてもかなり慎重に捉えている様子です。バグが現実のお金の問題に直結してしまうこと、開発陣が良い機能だと思っていても、クリエイターに受け入れられなければ意味がないことなどを挙げ、まずはクローズドベータからのスタートを予告しています。
クローズドベータは、これまでのベータとは明確に異なり、10~20名程度のクリエイターを招待するというものです。内部的なテストを行った後に、さらにこうした少数のクリエイターによる試験を通して、本当にクリエイターにとって使いやすいものなのかを検証していくとのことです。
また、このクローズドベータはアメリカ国内在住のクリエイターのみを対象としています。同機能の国際的な展開はなるべく早く行えるよう動いているとのことですが、正確なスケジュールに関しては開発陣だけではわからないと伝えています。
特に、日本ユーザーに関してはまだ先行きの見えない内容とはなりましたが、VRChatが着実に「クリエイターエコノミー」の実装に向けて動き出していることが伝わる発表内容でした。先日発表されたAndroidスマートフォンへの対応も含め、今年から来年にかけVRChatも大きく姿を変えようとしているのかもしれません。
●参考リンク
・プレスリリース(英語)