VRChatには、多種多様なワールドが存在します。ゲームワールド、交流用ワールド、少人数用ワールド、景観ワールドなど、そのほとんどは一般ユーザーによって作成されたものです。「自分だけのワールドを作ってみたい!」と思ったことはありませんか?
この記事では、初心者の方でも簡単に作成できるように極力ハードルを下げたうえで、少人数で楽しめるワールドの作り方を紹介します。
目次
VRChatのワールドを作るのに何が必要?
VRChatのワールドを作るために必要なものは、以下の2つです。
- VRChat Creator Companion(VCC)
- Unity
アバターをアップロードしたことがある方なら、すぐに準備できます。
ワールドをアップロードするには、VRChatのユーザーランクが「User」以上である必要があります。VRChatをプレイすることでユーザーランクは上がりますので、まだ「User」に到達していない方は、他のユーザーが作成したワールドを参考にしながら、ランクアップを目指しましょう。
ワールドを作るだけならすぐにできる!
VCCで「Worlds 2022」を選択し、「Create New Project」をクリックすると、新しいプロジェクトが作成されます。
この時点で、すでにワールドの基礎となる床と、初期位置を決めるスポーンポイントが用意されています。
床には、アバターが地面をすり抜けないようにコライダーと呼ばれるものが設定されているので、このままでもVRChatにアップロードしてワールドとして公開できます。
これでワールドが作成されました。しかし、まだ殺風景で何もない状態です。ここから、皆さんが普段訪れるような魅力的なワールドに仕上げていくには、どうすればよいのでしょうか?
0から作るとなると、途方にくれてしまいます。そこで、今回はBOOTHなどで販売されているワールドアセットを活用して、ワールド制作を進めていきましょう。
販売されているアセットを見てみよう
BOOTHなどのECサイトでは、VRChat向けのワールドのデータが販売されています。「ワールドを作る」だけであれば、先ほどの方法で問題ありませんが、そこからの機能やクオリティアップとなると、さまざまな作業が必要になります。
逐一こなすのもいいのですが、0から作るとなると知識がない状況ではゴールも見定めることができず完成できない状況になることもあります。そこで、まずは完成度の高いアセットを参考にしながら、ワールド制作に必要な要素を理解し、徐々に自分の手で要素を追加していくことをおすすめします。
今回は、QuickBrown Design Studioから販売されている「VirtualComfortRoom:Edge」というアセットを例に、ホームワールドを作成していきます。ここで紹介する作業は、少人数で過ごすことを想定したホームワールドであれば、ほとんどのアセットに共通するものです。記事の内容を参考に、自分の環境に合わせて進めてみてください。
ダウンロードしたアセットをUnityにインポートしてみましょう。Unityを開き、ダウンロードしたunitypackageファイルをダブルクリックすると、アセットがインポートされます。すでに構築済みのアセットなので、UnityのSceneビューにワールドの景観が表示されるはずです。
Sceneビューでは、ワールドを構成するオブジェクトを配置したり、移動したり、編集したりすることができます。この状態でもVRChatにアップロードしてワールドを公開できますが、ホームワールドに役立つギミックやアイテムを追加してみましょう。
購入したワールドのアセットに含まれていない場合でも導入方法と設定方法を紹介しますので、他のワールドを作成する際の参考にしてください。
ホームワールドにあると便利なギミックやアイテム
入室ログやペン
放置中や、VR睡眠した際に誰が来てくれたのかログに残ると後であいさつに行けるのでありがたいですよね。ペンに関しても、書置きやコミュニケーション手段の一つとしてほしいツールです。
そこで出番となるのが入室ログとペンです。多くのワールドで使われているQvPenは、ペンの外観を差し替えることもできます。ワールドの雰囲気に寄せたい場合は、外観の差し替え用のモデルも探すといいでしょう。
動画プレイヤー
動画プレイヤーがあれば、好きな音楽を流したり、友人に共有したい動画を流したりと、さまざまな用途に活用できます。iwaSync3やYamaPlayerなど、ユーザー間で使われている動画プレイヤーは複数ありますが、動画を再生する機能だけに絞れば差異はないので、細かい機能などを比較して、好きな動画プレイヤーを導入しましょう。
ミラー
ミラーは、ホームワールドのようなゆったり滞在するワールドには必須といってもいいほどのインフラなので。忘れずに設置しておきましょう。今回例に紹介しているアセットでは導入されているので、ない場合の設定をご紹介します。
デフォルトで導入されていない場合は、以下の手順で設定します。
- Hierarchy内で右クリックし、3D ObjectのQuadを選択します。
- Inspector内でAdd Componentをクリックし、「VRC Mirror」と検索して、VRC Mirror Reflectionを追加します。
- マテリアルはFX内のMirrorReflectionに設定します。
これでミラーの完成です。Inspector内の「VRC Mirror Reflection」にある「Reflect Layers」の項目で、ミラーに映すものを細かく設定できます。ワールドをアップロードした後にミラーを見てみて、UIなどが映っている場合は、「Reflect Layers」を確認して項目を調整すれば解決するはずです。
ミラーをON/OFFできるスイッチが欲しい!!
ミラーのON/OFFを切り替えるスイッチを作ってみましょう。
- Hierarchy内に3D object→Cubeを作成します。
- Assets→UdonSharp→UtilityScripts内にあるInteract Toggleをキューブにドラッグ&ドロップします。
- Interact Toggle内のToggle ObjectsにON/OFFしたいミラーを指定します。ミラーを選択してドラッグアンドドロップで持っていけば直接指定できます。
これで、USEするとミラーのON/OFFを切り替えられるスイッチの完成です。
BOOTHでスイッチも販売されているので、それを利用するのも良いでしょう。VRChatのワールドをいくつか見た人なら、馴染みのあるデザインのはずです。自分や他の人がすぐに使えるようにするための工夫になるので、導入を検討してみてください。
ワールドに流れるBGMも設定しよう
次は、ワールドBGMを設定してみましょう。
美しい景観のワールドや落ち着いた雰囲気のワールドでは、BGMが流れていることが多いです。この記事ではやり方を2つ紹介していきます。流したい音源は別途自分で用意してください。
動画プレイヤーを使ってYouTubeにある好きな動画の楽曲を流す
iwaSync3をはじめ、多くの動画プレイヤーには、ワールドに入ったときに動画を自動再生する機能が搭載されています。
iwaSync3の場合は、iwaSync3(Script)内のDefault Urlに流したい動画のURLを入力することで、Unity上に音源を配置することなく、ワールドBGMを流すことができます。ただし、この方法を使う場合は、動画の権利関係に注意しましょう。
権利周りにに問題ない音源を使う
もし、VRChatで使用許可が出ている音源や自作の音源を持っている場合は、ファイルをHierarchyにドラッグ&ドロップすることで、ワールドの音源として流せます。
InspectorタブのAudio sourceにあるVolumeは、0.2〜0.3くらいに設定しましょう。デフォルトの1だと、非常に大きな音で再生されます。また、LoopをONにしておくと、音源が繰り返し再生されるので便利です。
BGMのON/OFFもミラーのところで作ったトグルスイッチを音源用に作れば同じように制御可能です。動画鑑賞と被ってしまったり、会話の阻害になる可能性もあるのでON/OFFできるといいでしょう。
物を置いて雰囲気を変えてみたい
すでにあるもの以外に何か物を置きたい場合は、blenderなどで自作のオブジェクトを作って、持ち込んでみても良いでしょう。
しかし、そこまで時間はかけられない、やり方がわからないという方にはBOOTHやUnityのタブにあるAsset Storeをおすすめします。くまなく探せばきっと望みのものが見つかるでしょう。
BOOTHでは、カテゴリ「3Dモデル」のサブカテゴリ「3D小道具」で検索するほか、ワールドギミックで検索するのがオススメです。
その他オススメのギミックやアセットの紹介!
よく見かけるコーヒーマシンのアセットです。VR内でもコーヒーを入れるという時間はなんかほっとしますよね。
アバターの頭上にタグが出せるギミックです。
後からジョインしてきた人に「AFK中」や「話がしたいです」、「7時に起こしてください」など好きなものが作れます。
3Dモデル「imagePad」+ VRChat Udon用ギミック
画像URLを入力するだけで、ワールド内の全員と画像を共有できます。
オフ会の思い出や、自慢のペットの写真などを友人らと共有するのはもちろん、イベントなどの会議にも使えるので、備え付けておくと何かと便利です。
ワールドの軽量化で有効な「ライトベイク」
ライトベイクは、ライトの当たり具合、影をオブジェクトに焼きこむ作業のことです。ライトベイクをすることにより、ワールド内で都度光源の計算をすることがなくなり、影や明かりの効果を得られます。ワールドの軽量化にも貢献します。
ライトベイクについては、設定項目やベイクする際の解像度、サンプリング数など設定できる箇所は多岐にわたるので、本記事では最低限の操作の紹介にします。
壁や床、置いてあるものなど、動かす予定のない物にStaticのチェックを入れておきましょう。
Light ExplorerタブにてDirectional LightのModeはMixedにしておきます。アバターの影はリアルタイムに動くようになります。Point LightなどはBakedにします。つまり、アバターや物の影をリアルタイムに拾ってほしいところはMixedにしておくといいでしょう。
オブジェクトと光源の設置が終わったらベイク作業に入りましょう。
ここで1点だけ注意するポイントがあります。
Lightmapping Settings内のLightmapperを選択すると、CPUとGPUを選択できます。CPUだと時間がかかる代わりに丁寧な作業、GPUだと高速な代わりにクオリティが低下するようです。テスト段階ではGPUを使い、最後の仕上げの際にCPUを使うと良いでしょう。
下にあるGenerate Lightingボタンを押すとライトのベイクが始まります。完了すると、AssetsのScene内にLightmapが生成されます。
物をつかめるようになりたい!
ワールド内にあるものの中で掴んで動かしたいものもあるはずです。オブジェクト側に設定する必要があるので紹介します。
プレイヤーが掴んで動かしたいオブジェクトを選択し、Inspector内のAdd componentより「Rigidbody」、「VRC Pickup」、「Box Collider」、「VRC Object Sync」の4点を入れます。
動かしたいものは、Staticのチェックを外します。
Use Gravityにチェックを入れると手を離したときに素直に落ちていくようになります。
VRC Object Syncはほかの人と同期するようになります。
ほかにも無重力状態や、ふわっと投げれる設定など、さまざまなパラメーターが存在します。興味がある方はいろいろいじってみましょう。
アセットや音源の製作者に敬意をこめてクレジットをしよう
ワールド制作に一区切りができたあとは、使用したアセットなどをクレジットとして掲示をしましょう。テキストを書いた画像を作成し、Plainなどのテクスチャで差し替えればOKです。
クレジットの書き出しを手伝ってくれるツールもあるので、気になる人は導入してみてください。
ワールドのアップロードについて
今回紹介したのは、最低限で販売・配布されているアセットを使って少しいじった程度の紹介になります。もっと詳しく、さまざまな効果や機能を作りたい方は参考書やサイトを参考にしてみてください。
Pandora – MasterPiece of Music
Virtual Collection Men’s Stage Soundtracks